▽02/06 23:28

二人で暮らすのも慣れてきた冬のある日。
いつものように突然キスを仕掛けてきたオミが眉を寄せた。

「唇、荒れてるね」
「相変わらず不摂生な生活のせいだろ」

そっと唇をなぞる指に少しばかりの嫌味を返しても気にする様子もない。
(もしかしたら、気付いてないだけかもしれないけど)
だから何度も唇の上を往復させている手を掴んで離した。

「そんなに触んな」
「リップ使いなよ」

抗議の声を上げてみたって、そんなもの聞いちゃいない。
全く噛み合っていない話題も気にならないのか、オミがリップを差し出してきた。

「そんなモン使えねぇ」
「荒れた唇だとキスしてあげないよ?」
「別にいらねー」

ふんっとそっぽを向くと可愛くないねと呆れたような声が降ってきて、差し出したリップクリームを自分の唇に塗り始めた。
ごろりと寝転がったカゲミツを上から覗き込み、腕を折ってだんだんと顔が近付いて来た。

「んっ、」
「ふふ、可愛い声」

ちゅ、ちゅっと音を立てて何度も唇を重ねられる。
逃げようとしたら追われて、優しく顎を掴まれた。

「キス、しないんじゃねーのかよ」
「俺が塗ってキスしたらカゲミツも塗ったことになるかなと思って」

ふふと悪戯に微笑んで、離れていた顔がもう一度近付いて来た。

「俺が、治してあげるから」

(こんなのだったら、いくらだってつけてやるよ)

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