▽12/07 00:19

窓からかすかに差し込む光にカナエが重たい瞼を上げた。
窓の外からは小鳥のさえずりが聞こえ、腕に人肌の温もりを感じてカナエはふと思うのだ。
これ以上なく幸せだと。
自分にこんなにも幸せな朝が迎えられる日が来るなんて、夢にも思っていなかった。
アマネの人形だったあの頃はこんな夢さえ見てはいけないと思っていた。
白いシーツに包まれ、すやすやと眠るカゲミツの額にそっと唇を落とす。
ん、と身じろいだ姿が可愛いくてクスリと笑みをこぼした。

「カ、ナエ・・・?」
「おはようカゲミツ君」

しばらく寝顔を眺めているとカゲミツが目を覚ました。
寝ぼけた話し方は少し幼くてやっぱり可愛いなと思う。

「起こせばいいだろ・・・」
「あんなに気持ち良さそうなのに起こせないよ」

それに寝顔を見ていたかったと正直に告げるとカゲミツの顔がボッと赤くなった。
ブランケットを頭までかぶって隠そうとする手に自分の手を重ねた。

「顔、隠さないで」
「うるせぇ・・・」

ゆっくりとブランケットを肩までさげるとむっと恥ずかしそうにそっぽを向くカゲミツが目に入った。
何だか急に愛しさが込み上げてきて、手を伸ばして腕の中におさめた。
耳に首に頬に、次々にキスを落とす。

「俺ね、こんな日が来るなんて思ってなかった」
「どういうことだよ」
「何も考えずに大好きな人と一緒に朝を迎えられる日」

カナエの言葉にカゲミツが頭を胸にぐりぐりと押し付けた。
顔を見せたくないのか、カナエの背中に回して隠している。
だからお互い横向きだった体制からごろりと体重を掛けてカゲミツの上に乗り上げた。

「カナエ?」

恐る恐る見上げてくるカゲミツにカナエが綺麗に微笑む。
この体制はやばいなとカゲミツが思った瞬間、カナエが口を開いた。

「でも俺は欲深いからそれだけじゃ足りなくなっちゃった」

言葉とともに振って来た唇にカゲミツは観念したように瞳を閉じた。

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