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「誕生日おめでとう」
昼休憩になってふわぁと大きく伸びをしたとき、背後から掛けられた声にカゲミツが顔を歪めた。
「お前に言われると気持ち悪いんだよ」
「せっかく俺様が祝ってやってるのに失礼な奴だな」
「祝ってくれなんか言ってねぇよ」
ぷいっとそっぽを向いてまた机に向いたカゲミツを見てキヨタカが相変わらずだと笑う。
「いい加減少しは大人になったらどうだ?」
「本当にめでたいと思ってんのか?」
「俺はカゲミツが生まれてきてくれたことに感謝しているぞ」
笑っていた顔が突然真剣な表情になり、カゲミツが息を詰めた。
思いがけない言葉に顔に熱が集まる。
嬉しい、訳なんてねぇ・・・。
沸き上がる気持ちを必死に抑えて背中を向けた。
そんなわかりやすい反応にキヨタカがフッと笑った。
「お前ほどいじめがいのある奴なんてそういないからな」
「・・・っ、お前騙しやがって・・・!」
「騙したつもりはない。カゲミツが生まれてきて嬉しいのは本心だからな」
振り向いて今にも噛み付いてきそうなカゲミツの頭に手を置いてわしゃわしゃと掻き混ぜた。
怒りがひいたのか大人しくされるがままになっている。
しばらくそうやっていると、カゲミツが口を開いた。
照れたような恥ずかしさとどこか嬉しそうなの声色で。
「いつまでも子供扱いするなよ」
「お前はまだまだガキだからな」
「だからガキじゃねぇ!」
最後に優しく撫でてから手を離した。
一瞬だけ寂しそうに揺れた瞳を見て、やっぱりまだ子供だと内心笑う。
これ以上からかうと怒りそうだと体の向きを変えた瞬間、カゲミツに名前を呼ばれた。
「キヨタカ、」
「なんだ?」
「その、・・・ありがと、な」
顔を俯け、小さな声で呟かれた言葉にキヨタカが目を瞬かせた。
耳まで赤くしている姿が素直に可愛いと思う。
指で眼鏡を上げたのはちょっとした照れ隠しだ。
「いつもそうやって素直になればいいものを・・・」
「やっぱ前言撤回だ!」
わーわーとまたうるさくなったカゲミツから離れ部屋を出た。
照れたようなカゲミツを思い出し、キヨタカは心の中でもう一度呟いた。
「誕生日おめでとう、カゲミツ」
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