▽11/09 22:22

カナエとケンカした、とやって来たタマキの話を聞くこと30分。
真剣に話を聞いてやる姿はつくづくお人好しというか何というか。
その背中を見て、カゲミツはまだタマキのことが好きなんだなぁと他人事みたいに思った。
最初は怒りをぶちまけていたのに最終的に泣き出しそうなタマキの背中をカゲミツが遠慮がちに撫でている。
しばらくして落ち着いたタマキを見てカゲミツはキッチンへと向かった。
数分後戻ってきた手にはマグカップが二つがあって、やっぱり俺の分はないんだと思う。
まぁホットミルクなんて気分じゃないけど、同居人なんだから少しは気に掛けるくらいはして欲しい。
パソコンに向けていた目をちらりと見遣ってもカゲミツはタマキしか見えていない。
自分に告白してきた奴に恋愛相談するなんてどういう神経してんだろ。
そうだよな、と同調するカゲミツの表情は微かに苦しそうだけどタマキはそれに気付く様子もない。
小さく息をついて、自分で淹れたコーヒーを口をつけた。
ブラックの苦い味が口いっぱいに広がった。


「ありがとう、話を聞いてもらってすっきりした」
「おう、話聞くくらいならいつでもするから」

夜の10時も過ぎた頃、来たときよりも晴れやかな表情のタマキがはにかんだ。
頬を掻いて照れ臭そうに答えるカゲミツを奥の部屋から覗く。
じゃあと手を振って出て行ったタマキにカゲミツも手を振る。
ばたんと音を立ててドアが閉まった瞬間、カゲミツが肩を落とした。

「はぁー・・・」
「溜め息なんてつくなら話聞かなきゃいいでしょ」
「そういう訳にもいかねーだろ」

重い足取りで部屋に戻ってきたカゲミツがソファーに座った。
辛そうな顔を隠そうともしないことに、少しだけ嬉しくなる。
ノートパソコンを閉じてカゲミツの隣に座る。
俺のことなんてどうでもいいのか、カゲミツは特に気にすることもなくソファーにもたれている。

「タマキのどこがそんなにいいの?」
「・・・お前には分かんねーよ」

分かりたくもないよ、と言いたくなって口を噤んだ。
そんなこと言うとカゲミツが激怒するなんて目に見えている。
喉まで出掛かった言葉をグッと飲み込んでカゲミツのきらきらした髪に指を通した。
あくまで、友人を慰めるかのような体で。
もう一度大きく息を吐き出したカゲミツの顔を自分の肩に乗せた。

「お前は本当にバカだね」
「分かってる」
「じゃあカゲミツの愚痴は俺が聞いてあげる」

素直にありがとうと告げられた言葉に内心驚いた。
これは相当参っているなと閉じられた瞳を見て思う。
・・・俺を好きになれば、こんな顔絶対させないのに。
まだ口には出せない言葉を心の中で投げ掛けた。

*

カナタマエンド後のカゲミツを慰めよう!
と思い立って書いたら違う方向に転んでしまいました←
もうちょっと幸せな着地点を想像してたんですけどねぇ。

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