▽10/03 00:45
「あー、ついに上がっちゃったねぇ」
「辞めるにはいい機会なんじゃねぇの?」
テレビから聞こえるタバコ増税のニュースにトキオがはぁーと大きくため息をついた。
がさごそとポケットをあさり、ぐちゃぐちゃになったタバコの箱を取り出した。
入っているのは残り5本。
辞めるべきなのかなぁと思いつつまたポケットにしまう。
「カゲミツは辞めて欲しそうだよな」
「俺タバコ嫌いだし」
カゲミツの言葉にやはり禁煙すべきかなぁと考える。
前にも挑戦したけどタバコがないと口が寂しいんだよなぁ。
かと言って飴玉は甘くて食べる気になれないし。
うーんと唸っているとカゲミツが顔を覗き込んできた。
あ、そうか。その手があったんだ。
「禁煙するからさ、口寂しくなったらキスさせてよ」
「はぁ?ガムでも食ってろよ」
「カゲミツのためにするんだから」
顎を持ち上げて至近距離でカゲミツの顔を見つめる。
だんだん赤に染まる顔にニヤけそうになるのを抑えて口を開く。
カゲミツはこうされるのにとてもに弱いのだ。
「なぁ、いいだろ?」
「わか、った・・・」
期待しているのか、耳まで真っ赤に染まったカゲミツが可愛くてお望み通りに唇を重ねる。
ん、と息を漏らして指を絡めてくるなんて無意識にやるんだから恐ろしい。
カゲミツとのキスを堪能した後、一人ベランダでタバコの煙を揺らす。
もう最後かと思って吸っていると珍しくカゲミツもベランダに出て来た。
「どうした?」
「いや、最後だと思ったら見ておこうかなと思って」
カゲミツはそうやってタバコを吸う姿をじっと眺めている。
「やけに様になるからむかつくんだよな」
ポツリと呟かれた言葉に嬉しくなったのは内緒だ。
そう言うならば禁煙も辞めようかと思ったけれどよく考えて思い直す。
寂しくなったらカゲミツがキスさせてくれるんだから。
灰皿でタバコの火を消してをカゲミツの背中を押した。
「これから寂しくなったらよろしくな」
「タバコ辞めるためだからな」
振り向かずに言ったカゲミツのほんのり赤くなった首筋に触れるだけのキスを落とした。
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