▽09/07 12:08

深夜二時過ぎシンジュクを一人歩く。
ネオンに溢れ昼よりも眩しい街も、一本横に入ればどこにでもあるような人気のない道になる。
てくてくてく。
歩いてたって人一人どころか車にだって遭遇しない。
耳を澄ませたって何も聞こえない。
そんなときに、ふと感じてしまうことがある。
黒く塗り潰された世界にたった一人取り残されたんじゃないか?
そう思うと、どうしても言いようのない不安に襲われてしまうのだ。
そしてそんなときは必ず彼に電話してしまう。

「もしもし、まだ起きてたの?」
「それはこっちのセリフだよ、何時だと思ってんだ?」

面倒臭さそうに、でもちゃんと受け答えするカゲミツにクスリと笑ってしまう。
世界に取り残された訳じゃないんだとホッと安心する。

「ねぇカゲミツ君、今から行っていい?」
「はぁ?だから今何時」
「ヒカル君、いないんだよね?」
「い、いるぞ!」
「じゃあ代わってよ」

カゲミツの抗議の声を遮って話す。
ヒカルはキヨタカと一緒にミーティングルームを出て行ったのを見た。
黙り込んだカゲミツに苦笑しながら口を開く。

「カゲミツ君に、会いたいな」
「さっき会ったじゃねぇか」
「それは同僚として、今度は恋人として会いたいんだけど」

またカゲミツが黙ってしまった。
電話の向こうで顔を赤くしているであろうカゲミツが愛しくてたまらない。
早く行ってこの腕の中に抱き締めたい。

「じゃあ今から行くから、待っててね」

それだけ告げて電話を切った。
朝までまだ時間はある。
黒く塗り潰された世界ももう気にならない。
早くカゲミツに会いたい。
そう思って歩くスピードを早めた。

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