▽08/16 21:28
「暑過ぎて死ぬー」
「暑いって言うから暑いんだよ」
「じゃあ何とか涼しくしろよ」
ソファーでぐたりとするカゲミツがオミを睨み付ける。
うちわを持つ手はすでに止まっていて何の役にも立っていない。
「暑いときは涼しいことを考えるといいんだよ」
「本当かよ」
例えば、と口を開いて考える。涼しそうなこと、涼しそうなこと。
早くしろよと言わんばかりのカゲミツの視線が痛い。
「例えばカキ氷が美味しそうだとか」
「じゃあ買って来いよ」
「どうしてそうなるんだい」
はぁとため息をひとつ吐き出すと、カゲミツが突然立ち上がった。
目の前に立ったかと思うとストールをするりと取られた。
何事かと成り行きを見守っていると不機嫌そうなカゲミツの声が聞こえた。
「見てるだけであちーんだよ」
なんてもんつけてんだとソファーにストールを投げ捨てる。
そのままどかどかと歩いてソファーに持たれかかる。
暑そうだというのならカゲミツだってそうだとオミは思う。
腕捲ってはいるがカゲミツなんて長袖のツナギだ。
胸元は広めに開けられているが、夏なんだから中のTシャツだけで十分だ。
ん?自分の頭で考えたことをもう一度反復する。
中のTシャツだけで十分だ、ツナギの上半身は腰に巻きつけておけばいいのだ。
今まで感じていた暑さが一気に吹き飛んだ。
暑さを解消するついでに、少しカゲミツで遊ばせてもらおう。
「カゲミツ、涼しくなる方法見つけたよ」
そう言ってにこやかに笑ってカゲミツに近付く。
怪訝そうに顔を上げたカゲミツに構うことなくチャックに手を掛けた。
「な、何するんだ!」
「ツナギを抜けば涼しくなるんじゃないかと思って」
一気にジッパーを下ろすとカゲミツの顔が少し赤らんだ。
昼間から一体何を想像しているというんだ。
「カゲミツ、顔赤くして何想像してるの?」
「な、何も考えてねーよ!」
「嘘だ、何かやらしいことでも想像したんじゃないの?」
夜、ベッドの上でするようにカゲミツの腕を抜こうとする。
その気はないが、ここまで期待されたらしなくてはいけない気がする。
据え膳を食わぬは男の恥とも言うじゃないか。
「ツナギを脱がすだけで終わろうと思ってたのに」
両腕をツナギから抜き終えて耳元で囁くと顔が更に赤くなった。
腰辺りまでずらしたツナギから見えたTシャツの裾に手を忍ばせる。
腹をゆっくりと撫でるとカゲミツが息を詰めた。
「やらしいカゲミツの期待に応えてあげる」
ちゅっと首元に口付けを落とし、本格的に始めようとしたときに扉が開いた。
「・・・アイス買ってきたけど、お邪魔だった?」
無遠慮なトキオの声が部屋の中に響き渡る。
せっかくその気になってきたカゲミツの顔が一瞬にしてさーっと青くなる。
邪魔だと言い掛けたオミの口を手で塞ぎ、邪魔じゃないとカゲミツが叫ぶ。
「じゃあ待ってるから」
ひらひらと手を振ってトキオは部屋から出て行った。
Tシャツに手入れられたままだと説得力ないよーと付け加えて。
ばたんと扉が閉まった瞬間に口を塞ぐ手をどけてオミを押し返す。
「何やってんだよ!」
「でも涼しくなったんじゃない?」
ごつん、頭にゲンコツを一発食らわしてからカゲミツは出て行った。
痛いなぁと呟きながら、オミも立ち上がった。
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