▽12/11 00:01

夜、ミーティングルームに一人で座っているとキヨタカ隊長がふらりとやってきた。
さっきまで考えていたことを一旦忘れ、へらりとしたいつも通りの笑顔を貼り付ける。

「忘れ物ですか?」
「まあそんなところだ」

答えを濁したなと頭の隅で思っていると隊長は自分のデスクではなく俺の方に近づいて来た。
なんですかと尋ねる前に大きな腕に身体を包み込まれた。
身を捩って逃げようとしたけれど敵う相手ではない。

「何、してるんですか?」

焦った自分を知られたくなくて努めて冷静に尋ねても、お前を抱き締めていると意に介さない。
だから再び抵抗してみたものの解放する気はないらしい。
ならば無駄な抵抗はやめてしばらくの間されるがままにすることにした。



「最近いろいろあっただろう」

しばらく無言の時間が続いたが、先に口を開いたのはキヨタカ隊長の方だった。
その一言で真っ先に浮かんだのは世話になったA部隊の隊長の顔だ。
それから以前の仲間たちの顔が次々と脳裏に浮かび上がってくる。

「お前も辛かったな」

まるで小さな子どもにするようにキヨタカ隊長の大きな手が頭に乗せられる。
そんな風に優しくするのはやめて欲しい。

「俺、そんなに子どもに見えますか?」

そう茶化してこの湿っぽい空気を壊そうとしたのに、キヨタカ隊長は無理をするなとピシャリそう言った。

「大人だって泣きたい時は泣けばいいんだ」

顔は見ないでやると後頭部を押され、キヨタカ隊長の肩に顔を埋める形になる。
涙は誰にも見せないと決めていたのに、背中に手を回しそのあたたかさに甘えてしまった。


「お前もしおらしいところがあるんだな」

少し落ち着いて息を吐き出すとキヨタカ隊長が楽しそうに口端を上げた。
身体を抱き締める腕の力が強くなったと思えば唇が耳元に近付いてくる。

「なんなら心も身体も慰めてやろうか?」

さっきまでのいい上司はどこへやら、ただのエロ親父になったキヨタカ隊長に渾身の一発お見舞いする。

「少しでも見直した俺がバカでした」
「冗談だろ、つれないな」

ようやく解放したかと思ったらキヨタカ隊長はまた頭をポンポンと撫でた。

「これでいつものお前に戻ったな」

今度は自然な笑顔を見せてじゃあなとキヨタカ隊長は帰って行った。
してやられた気分だけど、心が軽くなったのも本当だ。
さっきまで考えていたことは忘れ、ミーティングルームを閉める準備を始めるのだった。

*

ついった診断メーカーより
トキオを抱きしめてみた。最初の内こそ慌てていたが、しばらくするとゆっくりと背に手が回ってきたので堪らなくなり抱きしめる力を強めるとすぐに苦情がきた。申し訳ありません。

さすがに申し訳ありませんといった類いのものをキヨタカの台詞に入れることはできませんでした←
しかし久々の更新がきよときって。

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