▽08/21 01:01

「カゲミツ、タントレって知ってるか?」

突然そう問い掛けてきたヒカルにカゲミツは怪訝そうな顔で首を横に振る。
そうだよなと言いながらパソコンを指差してくるヒカルに、分かっているなら聞くなよと思いながらそれを覗き込む。
パソコンの画面には舌トレと大きく表示されていてなるほどなと納得する。

「で、これがどうしたんだよ」
「やってみたんだけど結構効くんだよ、だからお前にも教えてやろうと思ったんだ」

舌トレと大きく書かれた下には小顔効果と書いてある。
オシャレや美容に気を使うヒカルがいかにも好きそうなものだ。
だけどカゲミツはそんなものには興味がない。
面倒臭いと断る前にヒカルが画面をスクロールさせた。

「お前が見るのはこっち!」

さすが相棒、カゲミツの考えていることはだいたい分かるらしい。
ほれと指差されたのはいびき対策だとか口臭予防だとか書かれていてチラリとヒカルを見遣る。

「別に今口が臭えとかいびきがうるせーとかじゃねーよ」

またもや口に出すより早く察して答える。
そしてお前にそうなって欲しくねーから教えてやろうと思ったの!なんて言われると断りづらくなってしまう。

「難しいもんじゃないし一緒にやろうぜ」
「分かったよ、どーすればいいんだ?」

時間も掛かるものじゃなさそうだしと結局ヒカルの誘いを了承したのだった。

「じゃあまず鼻先についたクリームを舐めるみたいに舌を出して」

言われたままにやってみるとなかなかきつい。
ヒカルを見てみるとなんだか妙に色っぽくて何となく視線を逸らしてしまった。

「なんだよ」
「なんで何かちょっとエロいんだよ」
「お前がやってもエロくないから大丈夫だよ」

大丈夫って何だよ、っつーかエロい自覚あるのかよ!
そうツッコミたいがグッと堪えヒカルの言うことに従う。

「そのまま出した舌をゆっくり左右に動かして」

これ完全にアウトじゃねーの?
そう思ってもやっぱりグッと飲み込む。
それから上を向いて舌を上下に動かしたりだとか何種類か教えられてヒカルの講義は終了となった。

「ちゃんと家でもやるんだぞ」
「ああ、分かったよ」

お前はキヨタカの前でやるなよと言いかけたけれど、それは自分が足を突っ込むべきところではない。
だから頷くだけに留めてカゲミツは再び自分のパソコンに向き直った。

*

別にやらなくてもバレないだろうが、ヒカルに聞かれた時に嘘を突き通す自信がない。
ということでカゲミツは家に帰ってからヒカルに言われた通り一人で舌トレに励んでいた。
パソコンに向かいながら出来るし意外と悪くないかもしれない。
そんなことを考えていると、ただいまと言ってドアが開いた。
おかえりと返事してから舌トレを再開させると、オミが怪訝そうに顔を覗き込んできた。

「何やってんの?」
「舌トレ、ヒカルにやれって言われたんだ」

何それと言うからヒカルから受けた説明を掻い摘んでしてやるとなんだと一言で片付けられた。

「誘われてるのかと思った」
「は?」
「全然エロくなかったけどね」

オミまでヒカルと同じことを言う。
なんだよ、俺だってやろうと思えばエロく出来るし。
カゲミツがそう考えているとオミがでもと口を開いた。

「お前にそれは必要ないね」
「なんで」
「俺と毎日のようにやってるだろ」

意味を理解するのに数秒かかった後、カゲミツは顔を真っ赤にして叫んだ。

「バカ!変態!」
「はいはい、いいから黙って」

投げようとクッションを掴んだ手はいつの間にかオミに捕らえられて、抵抗する隙がないままソファーに押し倒された。

「じゃあ舌トレを始めようか」

そう言って近付いてきたオミに唇を塞がれ、もう絶対舌トレなんかしないと心に決めたカゲミツだった。

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