▽06/10 01:12

カナエとカゲミツのデートは基本的に家が多い。
外は人目もあるし疲れるから行きたくない。
カゲミツはそもそもワゴン車で暮らしているから家がない。
となれば必然的にカナエの家しか選択肢がないのだ。
初めてカゲミツが訪ねたときは、あまりにも殺風景な部屋に目を見開かせていた。
小さいのにがらんとして見えるほど何もない部屋。
最初はやることがなく、太陽の高いうちからカーテンを締め切ることになってしまったのだ。
その教訓を生かしてか、それ以降カゲミツは何かを持ってくるようにしている。
そして今日はノートパソコンを持ち込んでいた。
テーブルの上に乗せて二人で映画を眺める。
カナエが後ろから抱き込もうとしたのでそれを制して隣に座らせた。
肩が触れ合うほどの距離だけど、そこは黙っておこう。
一応、恋人同士だしな。
そう思いながら映画を見ていると、カナエがまた唇をぺろりと舐めた。
この体制になってからカナエはやたら唇を舐めている気がする。
癖かと思ったけれど、普段そんなところを見たことがない。
最初は映画に集中していたカゲミツだったが、次第に意識がカナエの唇に向くようになってしまった。
多分無意識だろうぺろりと舐めるその仕草が、妙に色っぽいのだ。
ずっと横目でその様子を眺めていると、今度はキスしたいという欲求が湧いてきてしまった。
ちらりと横を盗み見てもカナエは映画に夢中になっているのか、カゲミツの視線に気付いてくれない。
物語も終わりを迎え、エンドロールが流れ始めて一息ついたカナエの名前を呼んだ。

「どうしたの?」

言葉で聞いてくるカナエにん、と軽く唇を突き出す態度で示す。
分かれよと思うカゲミツをよそにカナエはこてんと顔を傾けた。
恥ずかしいけれど仕方がない。
だけど目を見て言うのは無理だから視線を床に落とした。

「キスしろって言ってるんだよ」

恥ずかしいけれど言い切ってカナエを見据える。
すぐにキスが降ってくると思っていたのに、カナエは固まったまま止まってしまった。

「おい、聞いてたのか?」

あんな恥ずかしいこと、二度も言わねーぞと思っていると、ようやく理解したのか顔をボンッと赤くさせた。
珍しいなと思って見ていると、カナエが言いにくそうに口を開いた。

「目、閉じなくていいの?」

慌てて目を閉じると待ち望んでいた感触が唇に落ちてきた。
啄ばむようなキスを何度か繰り返して、カナエは離れていった。

「唇舐める癖なんてあったか?」

さっきから気になっていたことを尋ねるとそんな癖はないけどと前置きしてから、でもと言葉を付け加えた。

「カゲミツ君があんな近くにいたらつい出ちゃうよ」
「どういうことだ?」

怪訝そうな顔したカゲミツの耳元にそっとカナエが顔を寄せ、少し艶めいた声で囁いた。

「唇を舐める仕草はね、興奮してるときに出るんだって」

その声にびくりと肩を揺らすとカナエがクスクスと笑った。

「俺がカゲミツ君見て興奮して唇を舐めて、それを見たカゲミツ君が興奮したってことだよね?」

キスして欲しくなったことは確かだが、興奮はしていない。
そう口を開き掛けたが出てきたのはうわぁと色気のない声だった。
目にも止まらぬ早技でカゲミツをベッドに乗せたカナエが素早くその上に乗り上げ抵抗するのを防いだ。

「な、何してるんだよ」
「キスだけじゃ物足りないかなと思って」

悪気のない顔をしてカナエはとんでもないことを言い放った。
そのままカゲミツはろくに抵抗出来ずに、キス以上のことをされてしまったのだった。

*

ついった診断メーカーより
カナエにキスをねだってみると、しばらく固まった後ようやく状況を理解したらしく顔を真っ赤にしてこちらを見つめてきた。どうやらこちらが目を閉じるのを待っているようだ。
でした!

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