▽06/06 23:53

任務後の残務処理を一人やっていると、ガチャリと音を立ててミーティングルームのドアが開いた。
こんな時間に誰だと首をそちらに向けると、今日は上層部のところに行っていたキヨタカが立っていた。
心なしか疲れているようにも見える。

「まだいたのか」
「残務処理がまだ終わってなかったんで」
「なら飯はまだだろう」

一緒にどうだ?と言うキヨタカに俺でいいんですか?と答える。
こんな時は自分よりヒカルの方がいいだろうと思っていたのに。

「お前以外誰がいるんだ?」

とキヨタカはニヤリと唇を歪めた。
また意味深な言い方をしてと思うが、口には出さずご馳走様ですとだけ答える。
タマキはこういうのにいちいち反応するから遊ばれるのだ。
全く意地の悪い人だと思いながら残務処理を片付けた。

*

キヨタカに連れられて入ったお店は料亭と呼ぶほど敷居が高くなく、落ち着いた趣のあるところだった。
個室に案内されて腰を下ろす。
いいところですねと素直に感心すると俺が選んだんだから当然だと返された。
その一言が余計だと思うがこれがキヨタカという人間だ。
出てきた瓶ビールをキヨタカのコップに注ぎながらトキオは心の中で溜め息をついた。

最初は普通に仕事の話をしていたのだが、酒が入ったせいか話が少しずつ違う方向にズレ始めた。

「俺の部隊は優秀だが見目もいいと思わないか?」

多分きっかけはこの一言だった。
何を言ってるんだと思ったけれど、これは他の部隊からも噂されていることだからそうですねと頷く。
まぁ俺が集めたんだから当然だなという言葉の後、話がどう続くのだろうと思っていたらジッと真顔で見つめられた。

「そんなに見つめないで下さいよ」

なんだかいい予感がしない。
冗談っぽく振る舞ってみてもキヨタカは表情を崩さない。

「俺はお前がJ部隊に来てくれて本当に嬉しく思っているんだ」
「え?」

思いもよらない言葉に不意を突かれた。
またどうせふざけたことを言うのだろうと考えていたから、ぽかんと惚けてしまった。

「ポカンとした顔も可愛らしいな」

だけどスッと手を伸ばして顔に触れたキヨタカにそのムードは一気に崩れ去った。

「な、何を言ってるんですか!」
「A部隊のリーダーを務めるほど優秀で、しかもこんなに可愛い奴が俺の部隊に入るなんて喜ばしいに決まっているだろ」
「可愛いって何ですか!」

少しでも感動してしまった自分が馬鹿らしい。
頭に手を当てて悔やんでいると、キヨタカはクツクツと笑った。

「お前はこういう駆け引きに慣れているかと思っていたんだがな」

どういう意味だと睨み付けてもキヨタカは笑ったままだ。

「顔を赤くして照れるなんて可愛らしいところがあるじゃないか」

珍しいものを見たと上機嫌なキヨタカに何も言い返せずに正座した膝の上で拳を握り締めた。
これじゃあからかわれて遊ばれるタマキと一緒じゃないか。
そろそろ帰るかと立ち上がったキヨタカの背中を追い掛けながら、今後は気を付けなければと心に決めたのだった。

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