▽01/12 12:39

トキオが撃たれた。
幸い命に関わるような場所ではないが、かと言ってそのままにしておく訳にもいかない。
大丈夫ですと言い張るトキオをキヨタカが隊長命令だと一喝しようやく大人しくなった。

カゲミツが病室に来てみると、トキオは上半身を起こし夜だというのに窓の外を眺めていた。
その表情はいつも見せるようなおちゃらけたものではなく、どこか儚く見えて声を掛けるのを躊躇ってしまう。

「カゲミツか」

どのタイミングで声を掛けようかと思いあぐねているとトキオが振り返った。
だからぶっきらぼうにいろいろ持ってきたと紙袋を見せると大げさだと笑った。

「一週間もしたら出れるのに」
「168時間もあるんだぞ」
「そう言われると長い気がするな」

そう言ってまた笑ったけれど、やはりいつもとどこか違う気がする。
気にはなるけれど触れてはいけない気がして黙って準備を進めているとトキオが独り言のように呟いた。

「やっぱ最低な奴には罰が当たるように出来てるんだよ」
「え?」

思わず聞き返すとなんでもないと首を振ったが、なんだかそれで終わってはいけない気がした。
だからあくまで冗談っぽく気になるだろと言うと、トキオもそうだなと話し始めた。

「上にいくために俺もいろいろやってきた訳よ、ズルいことも人を出し抜くようなことも人に言えないようなことも」

遠くを見つめる目は自分の過去の所業を思い出しているのだろう。
準備する手を止め、黙って言葉の続きを待つ。

「やっぱりさ、そういうことをした人間には返ってくるんだよな」

ここは同調するべきなんだろうか。
しかしトキオはそんなこと求めているのだろうか。
迷った末にカゲミツは口を開いた。

「そんな大した怪我じゃねーじゃん」
「ひでぇ!銃で撃たれて一週間も入院するのに?」
「大げさだって言ったのはお前だろ、それに」

そこで言葉を止めて小さく息を吸い込んだ。

「お前はお前が思ってるほど悪い人間じゃねえよ」

トキオの息を呑む音が聞こえた。

「今までJ部隊で見てきたお前は仲間を見捨てたり裏切ったりするような奴じゃない」

そう言い切るとトキオの表情が微かに歪んだ気がする。

「もしそれでも納得出来ないなら俺を幸せにしろ」
「…俺、カゲミツには何もやってないつもりだけど?」
「お前が後悔してることを全部俺が背負ってやる、だから」

もうくだらないことは考えるな。

そう言うとトキオは困ったように笑った。

「俺、幸せになっちゃいけないと思ってたんだけど」
「幸せになってもいいだろ、俺が許す」
「お前何者だよ」

笑いながらトキオが体重を預けてくる。
これは少しは信頼してくれているということなんだろうか?
そんなことを考えていると名前を呼ばれた。

「俺、懺悔しなきゃいけないこといっぱいあるからずっとお前の側から離れないかもしれないぞ」
「ずっと側にいればいいだろ」

思ったことをそのまま口にするとトキオが一瞬ぽかんとした顔をしてからお前には敵わないなと呟いた。

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