▽04/24 02:47

「なんでタマキ先生がここにいるの?」

いつものように棒付きキャンディを舐めながらトキオ先生が近寄ってきた。
もしかして俺の雄姿でも見にきた?なんで言いながら尻に手を伸ばされる。

「何してんだよ、バカ」

セクハラで訴えられるぞと言いながらその手を払ってくれたのはカゲミツ先生だ。
一応外科医だと気を使ったのかトキオ先生は手の甲を押さえている。

「でもなんでタマキ先生がこんなところにいるんだ?」

血が苦手なタマキ先生の来るところじゃねーだろと言われ曖昧に微笑む。
横からだから俺の勇姿をと口を挟むトキオ先生の頭を叩き、カゲミツ先生はこちらに向き直った。

「…ちょっと調査があって」
「そうか、今からオペだけど中入るか?」
「いや、大丈夫」

なんてやり取りをしていると看護師が二人を呼びに来た。
その途端ふざけていたトキオ先生の顔つきが変わり、カゲミツ先生も表情を引き締めた。
行くぞとさっきまでと同一人物かと疑いたくなる声色で告げて、トキオ先生は先頭を歩き始めた。
タマキはそれをただ黙って見送る。
調査しに来たのは、トキオ先生が癒着しているという告発文についてだからだ。
オペが始まるならここにいる必要もない。
タマキは救命救急センターを後にした。

告発文は他の医師や厚生労働省にまで届いて事態は大きくなった。
査問会議が開かれトキオ先生は癒着を認め会場がざわついた時、医師たちの携帯が一斉に鳴り始めた。
ショッピングモールで大規模な火災が発生したのだ。
トキオ先生とその場にいたカゲミツ先生は目を見合わせて会場から出て行く。
病院全体がトキオ先生の指揮下に置かれた。
それは10年前トキオ先生がまだ新米医師だった頃に起こった事件のようだった。

*

「そういえば、トキオ先生はどうしてジェネラルルージュと呼ばれてるの?」

火災事故も落ち着いた頃、再びトキオ先生を訪ねて救命救急センターに足を運んだタマキがそこにいたカナエ先生に聞いた。

「10年前のあの事故で血まみれになって治療したからって聞いてるけど…」
「そんなかっこいいもんじゃねーよ」

カナエ先生の言葉を遮るように割って入ったのはカゲミツ先生だった。
フンっと鼻を鳴らしながらこちらに近付いてきた。

「確かに10年前のあの事故以降呼ばれるようになったけど、そんなんじゃねぇ」

カゲミツ先生いわく、こうだ。
10年前、大事故だというのにこの病院にはほとんど先生がいなかった。
まだ新米だったトキオ先生が指揮を任されたが、初めて体験する修羅場に顔を青くさせていたらしい。

「そこで指揮官の弱気は部下に伝染するって発破をかけられたんだよね」

カゲミツに、といつの間にか現れたトキオ先生がニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
ギョッとするカゲミツ先生を気にすることなく腕を肩に回す。

「それでカゲミツが口紅を手渡してきたんだよ、それが由来」

でもなんで口紅なんか持ってたんだろうねとニヤニヤしながらトキオ先生がカゲミツ先生の顔を覗き込む。
トキオ先生の足を踏み付けてからヒカル先生の冗談を間に受けたのだと説明された。
ICUで働く者は口紅を所持する決まりがあると言われそれを信じてしまったそうだ。

「ただそれだけの話だから大したもんじゃねぇよ」

最後にそう締め括ったカゲミツ先生は居心地が悪いのか、すぐにそこを立ち去ろうとしたがそれではタマキがここに来た意味がない。
待って下さいと呼び止めてトキオ先生にもお話がありますと声を掛けた。

「査問会議は終わったのにまだ何かあるの?」
「実はまだ終わってなかったんです」

付箋を貼ったファイルを取り出して二人に見せる。
癒着は殆どが救命救急センターの美品などの購入に使われていたということで懲戒解雇の話はなくなった、けれど。

「ここ、チュッパチャプスって書いてますよね?」

金額は大したことなくてもこれは私的流用だ、そう主張するタマキにトキオ先生とカゲミツ先生が顔を見合わせる。

「だからトキオ先生には北海道の病院に行って頂きます」

にっこりとタマキが笑うとトキオ先生は何とも言えない表情で溜め息をついた。
これは医院長命令だと付け加えるとがっくりと肩を落とした。

「…カゲミツって寒いところ苦手?」
「別に」
「そう、良かった」

こうしてトキオ先生と、癒着を知っていたのに黙認していたと理由で辞表を出していたカゲミツ先生は北海道に行くことになった。
丸く収まってよかった、タマキがそう考えているとトキオ先生とカゲミツ先生の会話が聞こえてきた。

「もし凍えそうに寒かったら俺がいつでも暖めてやるよ」
「はぁ?バカじゃねーの?」

仲睦まじい、と呼ぶには親密過ぎる気がする。
カナエ先生の方を見ても、ただ曖昧に微笑まれるだけだった。

*

捏造に捏造を塗り重ねた感じになりましたね!\(^o^)/←
最後に思いっきり蛇足をぶち込んでしまいました

口紅のくだりをトキカゲでやると萌えるなどのふと考え付いて、ついやってみました
医療ものは苦手ですが映画版ジェネラルルージュの堺雅人が素敵で好きです

新米で顔を青ざめてるキヨタカに口紅を差し出すヒカルもありかなとも考えましたが、今回はトキカゲで
ずっと言ってますが、いつかオミカゲでまほろパロを書きたいです

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