▽06/09 00:35

準備は万端に整った。
夕食を済ませ洗い物も終わらせお風呂にも入った。
しかも明日は二人揃っての休みだ。
これを据え膳と呼ばずに何というのだろうか。
スポーツニュースを眺めながらビール缶を飲むタマキの口元から目を離すことが出来ない。
ここでいかなきゃ男じゃないだろ、頑張れ俺!
そう自分を奮い立たせて意を決して口を開いた。

「なぁタマキ」
「ん?」

テレビから目を離したタマキに上目遣いで見られて心臓がバクバクと音を立てる。
だけど俺たちは恋人同士なんだ。
こう思うのは自然の摂理だし何らおかしいことはない。

「キス、して欲しいんだけど」

とは思うもののそう告げた声は少し震えていてかっこ悪いなと自分でも思う。
まだタマキと恋人という関係になったことが信じられないのだ。
ごくりと唾を飲み込んでタマキの反応を窺う。
恋人になってからキスはいつもカゲミツから仕掛けてばかりだった。
たまにはタマキからもキスして欲しい。
ソファの隣に座って、肩に頭を預けてくれている今がチャンスだと思ったのにタマキはうーんと考え込み始めてしまった。
恥ずかしいからとすぐに断られたら、ショックだけどこれからゆっくり時間を掛けていこうと考えられる。
期待と不安が入り混じった目でを見つめているとゆっくりと顔が上げられた。

「…カゲミツ、ごめん」

悩んだ末に、タマキは困ったような笑顔でこう言ったのだ。
なんの笑顔なんだ?
期待が外れたことよりも不安な気持ちが表情に出てしまい、慌ててタマキが言葉を付け加えた。

「昨日ニンニク料理を食べたんだ!」
「俺はそんなの気にならねぇよ」
「俺は気になるんだ!」

疑いたくないけれど、本当はキスがしたくないからそんなことを言ってるのではないかと勘繰ってしまう。
そんな考えが伝わったのか、タマキがフッと顔を俯かせた。

「俺からする初めてのキスがニンニク臭いとか嫌だろ…」

分かれよバカと言われてさっきまで感じていた不安が一気に崩れ去った。
あまりの可愛い発言に胸をキュンキュンさせているとタマキは近くに置いてあったクッションに顔を埋めてしまった。
そんな姿が愛おしくてたまらない。

「タマキ」
「なんだよ」
「抱き締めるのはいいよな?」

ほんの僅かに頷いたのを確認し、タマキを背中に横から腕を回した。
布越しに伝わる体温が心地よくて抱き締める腕に力を込めた。

「俺、待ってるから」
「ん」

タマキからのキスはお預けになったが、それでもカゲミツは幸せでいっぱいだ。
顔を上げたタマキのおでこにキスを落としてカゲミツは微笑んだのだった。

*

ついった診断メーカーより
タマキにキスをねだってみると、しばらく考え込む素振りを見せたが結局笑顔で断られてしまった。期待させないでほしい。
でした。
タマキ編ということなんで、一応他のキャラでもやる予定です。

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