▽07/04 17:52

談笑したり武器の手入れをしたり居眠りしている奴がいたり。
思い思いに過ごす隊員達を満足気な表情で眺めていると、ふいにタマキが立ち塞がった。
どうした?と声を掛けると声を潜めて報告書ですと資料を手渡してきた。
通常業務の一環なのだから声を潜める必要はない。
そう思って資料に目を落とすと資料と一緒にポストイットが貼ってあるのが見えた。
今週の土曜の夜、空いていませんか?
タマキの顔をチラリと見るとほんのり頬を赤らめている。
そんな事なら二人きりの時に誘えばいいのにと思いながら資料をペラペラとめくると、間に花火大会のチラシが挟まっていた。

「ああ、大丈夫だ」

ニヤリと口の端を上げてみせると、タマキはありがとうございますとそそくさと自分の席に戻った。
他の仲間からみれば何てことないいつもの光景だ。
だけどタマキは大丈夫の意味をちゃんと理解しただろう。
自分から誘っておいて緊張したのか、席に戻るなり水を飲む姿を見ながらキヨタカは自分の携帯を取り出した。
タマキの浴衣姿、楽しみにしてるぞ。
そう一言だけメールを送信すると、タマキが大きく咳き込んだのが見えた。

*

それから数日経って土曜日がやってきた。
駅前でしっかりと浴衣を着込んで待っているのはキヨタカだ。
いつもはタマキの方が早く来て待っているのだが、今日は珍しくキヨタカの方が早く着いた。
懐から取り出した扇子でパタパタと扇いでいると、下駄の音を鳴らしながらタマキがやってきた。
遅れてすみませんと言うタマキもしっかりと浴衣を着ていてキヨタカが目を細める。

「よく似合っているな」
「隊長こそ、よく似合ってます」

恥ずかしそうに見上げてくる姿がくすぐったい。
しかしせっかくの浴衣姿なのに隊長呼びでは風情がない。
今は隊長呼びはなしだと言うとタマキも素直にキヨタカさんと言い直した。
行こうかと歩き始めると、いつもよりも遅いペースでタマキも後ろに続いた。

「歩きづらいか?」

半歩遅れながら歩くタマキにそう尋ねるとなかなか慣れないですねと眉を下げた。
それにとタマキは自分の浴衣に目線を落とした。

「慣れないせいで浴衣が着崩れしてしまって…」

言われてキヨタカもタマキの浴衣に目をやると、少し胸元が開いてしまっている。
そのまま視線を上げてタマキの顔を見つめると、さっきまでの困った表情はもうない。

「直したいんですけど、俺一人じゃ出来ませんし…」

蠱惑的な瞳に見上げられ悪い気はしない。
きっと花火大会に誘われた時からタマキはこうするつもりだったのだろう。
ならばその挑発に乗ってやろうじゃないか。

「俺は直せるが、今から行くと花火が見れないかもしれないぞ?」

この人通りの多い道を一本逸れると着崩れを直せるところがたくさんある。
質問の意図をタマキも分かっているだろうと思い聞くと、終わってからだと入れないかもしれませんからと返され思わず笑ってしまった。
タマキもずいぶんと言うようになったものだ。

「ならそれを直しに行こうか」

ぞろぞろと歩く人の波をするりと抜けて違う道に入る。
人通りがまばらになった道で肩を抱いてみても文句は言われない。
そういえば自分で着付け出来ないと言っていたが、これは一体誰が着付けただろうか。
今夜は楽しくなりそうだ。
そう思いながら二人は吸い込まれるように建物の中に入って行ったのだった。

*

自分で着付けたけど口実の為に嘘をつくタマキちゃんと、それを分かっていながら責めていくキヨタカ的なね?←
いろいろキヨタカに染まりつつあるタマキちゃんってのもいいと思います

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