▽03/11 18:51

「これから一ヶ月は俺に触るな!キ、キスだって禁止だからな!!」

嫌がるカゲミツを丸め込んでミーティングルームで事に及んだ後、ぴしりと指を突き付けてそう宣言された。
途中からカゲミツもノリノリだったじゃないかと口から出かかったけど、それを声にするほど空気が読めない訳ではない。
言ってしまえば火に油を注ぐようなものだし。
とりあえずここは謝ってそれを受け入れるのがいいだろう。

「悪かった、一ヶ月は我慢するよ」

そう告げるとカゲミツは当然だと言わんばかりに頷いた。
そしてその後腰が痛いから支えてくれと言われ、既に自ら約束を破っている気がするが黙って腰に腕を回した。

*

触らない、キスもしない。
そんな生活が二週間が経った頃だった。
最初はいつも通りの生活を過ごしていた二人だったが、最近妙にカゲミツがそわそわしている。

「おまえはその、触ったりしなくても平気なのかよ」
「カゲミツに触れれる方が俺からしたら奇跡だからね」

学生時代から思い続け叶うことない恋だと思っていた。
それがこうして隣にいて手を伸ばせば触れることが出来るのだ。
思い続けた時間に比べれば一ヶ月なんてほんの僅かな時間だ。
そう告げるとカゲミツはそうかと顔を真っ赤にさせた。

「そんなことを聞いてくるなんて、本当はカゲミツが我慢出来ないんじゃないの?」
「そ、そんな訳ねーだろ!清々してるわ!」
「そう、それは聞き捨てならないけどね」

そう言って読んでいた本を閉じて立ち上がると、カゲミツがギョッと目を見開いた。

「…禁止だからな」
「トイレに行くだけだけど?」

そのままカゲミツの横を素通りすると、ホッとしたような寂しそうな顔が見えた。
声を掛けようか迷ったけれど、変なことを言ってカゲミツの機嫌を損ねるのは避けたい。
すぐに元通りになったようだし特に気に留めることなくその場は終わった。

それから数日が経った日のことだった。
オミがいつものようにソファで本を読んでいると、大きな音を立ててドアが開いた。
ミーティングルームに忘れ物を取りに行っていたカゲミツが帰って来たんだろう。

「おかえり」

くるりと振り返って言うとカゲミツの手には忘れ物がなかった。
不思議に思ってどうしたの?と聞いてもカゲミツはそこに立ち尽くしたままだ。

「オミ」

言うか、言わないか。
逡巡しているようで名前を呼んだくせに視線は下の方を彷徨っている。
あえて声を掛けずにその様子を見ていると、カゲミツが意を決したように顔を上げた。

「キス、してぇ」

だから迷っていたのか。
恥ずかしがり屋なカゲミツがこれを言うのにどれだけの勇気を振り絞ったのだろう。
こんなことを言われるなんて、予想外だった。

「いいよ、おいで」

カゲミツの緊張が伝染したのかそう答える声が震えてしまった。
読んでいた本を閉じてソファの端に移動すると、カゲミツがぎこちない動きで隣に座った。
瞳を閉じたカゲミツの肩に触れようとして、一旦その手を止める。

「触っても?」
「ん」

小さく頷いたのを確認して両肩を掴んだ。
ゆっくりと顔を近付け唇を一瞬だけ触れさせた。

「もっと」
「いいの?」
「いいから」

ねだるように首に腕が回され引き寄せられるように再度唇を重ねる。
触れるだけのキスを何度か繰り返して顔を離した。

「これ以上はさすがに我慢出来ないから」
「…もう我慢しなくていい」

後頭部に回った手のひらにグッと引き寄せられる。
多分ミーティングルームで何かあったのだろうけど、今それを聞ける雰囲気ではない。
伏し目がちに、だけど誘うように薄く口を開くカゲミツ。
一ヶ月なんて僅かな時間だとは言ったけれどそれは付き合う前の話だ。
近くにいて、手を伸ばせばすぐ触れれる距離にいるのに我慢するのが辛いだなんて知らなかった。
カゲミツの指に自分のものを絡め、その華奢な身体をゆっくりとそこに押し倒した。

*

「ミーティングルームで何があったの?」

すべてが終わってから気だるい色気を放つカゲミツに質問すると意外な答えが返ってきた。

「ヒカル達がキスしててさ、すげー幸せそうだったんだ」

セクシャルなものじゃなくもっと恋人っぽい感じでと付け加えたカゲミツは恥ずかしいのか枕に顔を埋めた。
そし羨ましかったとぎりぎり聞こえるほどの声で洩らしたのだ。

「そう、じゃあセクシャルじゃないやつをもっとしてあげようか?」

からかうつもりで言うとカゲミツはそろりと枕から顔を上げた。
いつになく素直だ。
だから触れるだけのキスを何度も何度も顔中に降らせる。

「触ってもキスしてもいいからさ、時と場所は考えてくれよ」
「善処するよ」

その時はそう答えたオミだったが、一ヶ月後今度はワゴン車の中で事に及んでしまい再びカゲミツから触れるのもキスも禁止を言い渡されるのだった。
ただその期間は一週間だったけどね。

「別に一ヶ月でもいいんだよ」
「一ヶ月だと俺が我慢出来ねえ」

予想外に落とされる爆弾発言にオミが思わずてを伸ばすと、ぺちんとカゲミツに払い落とされるのだった。

*

なんかお題から離れてる感とぐだぐだ長く書き過ぎた感とうまくいくかはわからないオミさんメガネ話よりなぜこちらが先に出来てしまった感が入り混じっております
あと途中完全に致した感じになってますがあれも入れるつもりじゃなかったのにな…
なんか書いていくうちに入ってました

ではツアーは続くよどこまでも!
ということで青春を取り戻しに少し旅に出ます
木曜金曜あたりは時間ありそうやけどなー

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