▽03/09 00:16

あ、そういえばキヨタカにアレ持って来いって言われてたんだった。
キヨタカの家までの道のりを半ばまで過ぎた頃、ふと頼まれものを思い出した。
明日も会うのだから明日でもいい気はするがどうせなら今日渡してやりたい。
それに最近ろくに寝ていなくてきっと自分が着くまでの間に寝ているはずだ。
僅かな時間だけど多少足しになるだろう。
たまには歩かないと健康にも悪いしな。
そう結論付けてヒカルは来た道を戻り始めた。

てくてくと歩いてヒカルはようやく地下駐車場まで戻ってきていた。
中にいるのはカゲミツ一人だ。
いつもみたいにノックもせずにドアを開けようとすると、中から小さな声が聞こえた。

「あ、だめっ…」

これはカゲミツの声、だよな…?
聞き慣れない声にドアを開けようとする手を一旦止めた。
まるで喘ぐような声だけど、カゲミツは失恋したばかりでそんな相手はいないはずだ。
いくらタマキに惚れていたとはいえカゲミツは男が好きな訳ではない。
だからこれは不埒を働かれている訳ではないだろう。
どうせオミあたりにマッサージでもされてるんだろう。
マンガとかでよくあるパターンだ。
一瞬は躊躇ったけれど紛らわしい声出してんじゃねーよと笑ってやろう。
そう思って勢いよくドアを開けてみると。
中には座った状態でカナエに後ろから抱きつかれいるカゲミツの姿があった。
いつも着ているツナギの上半身はおへそのところまで開き、シートの上に投げ出されている。
しかもカナエはカゲミツの首筋に顔を寄せながらTシャツの中に手を突っ込んで胸のあたりをさわさわとしているじゃねーか。
恍惚とした表情を浮かべていたカゲミツがドアの開いた音で一気に現実に戻ったらしい。
顔を青くしながら金魚みたいに口をぱくぱくとさせている。

「ヒカル君帰って来たの?」

今日はお泊まりって言ってなかったっけ?とカナエは動じることなくカゲミツに尋ねている。
もちろん手はTシャツに入れたままで。

「ちょっと忘れ物があって」

許容範囲をオーバーすると却って冷静になるのかもしれない。
悪いと断りを入れて中に上がり込んで目的のものを手に取った。

「邪魔して悪かったな」

ごゆっくりと告げてワゴン車のドアを閉める。
しばらくは二人の残像が頭の中をぐるぐるしていた。
あれはどう見てもそう、だよなぁ。
カゲミツのことならなんでも知ってると思ってたんだけどな。
少し寂しさを感じなくはないけれど、カゲミツが新しい一歩を進み出したことが嬉しかった。
キヨタカに言うかどうか迷って、しばらくは自分だけの秘密にしておくことに決めた。
でも今度ちゃんと話を聞かないと。
そう思いながらヒカルなキヨタカの家へと足を速めた。

*

ヒカルが出て行った後のワゴン車。
驚き過ぎて何も言葉を発せなかったカゲミツが、カナエの一言によって声を取り戻した。

「ヒカル君にバレちゃったね」
「バレちゃったじゃねーだろ!」

よりによってこんなところを見られるなんて…
頭を抱えるカゲミツにまあいいじゃないとカナエが唇を落とす。

「っつーかお前がこんなところで盛るから!」
「でもカゲミツ君だって途中からヤル気だったじゃない」

否定したいのに事実なので否定出来ない。
こうやって二人になることが久し振りだったのだ。
顔を真っ赤にしたカゲミツが太ももをグーで殴ってもカナエはへらへらとしている。

「でも俺はこんな形だけとバレで良かったと思ってるよ」
「なんで?」
「ヒカル君ってカゲミツ君の保護者っぽいじゃん」

俺の方が年上だと喚くカゲミツを口を塞いで黙らせる。

「驚いてたみたいだけど、俺たちのこと認めてくれたっぽいし」
「まあヒカルにはいつか言わなきゃと思ってたしな」
「ヒカル君もごゆっくりって言ってたし続きやろうか」
「てめ、ばっ、か野郎…!」

*

後日ニヤニヤとしたヒカルにあの日あの後どうなったんだと根掘り葉掘りと聞かれた挙句、付き合うまでの経緯なども洗いざらい吐かされたカゲミツがやっぱ言うんじゃなかったと思ったのは別の話。

*

あえてえろくない話にしたかったけど浮かばなかったのでえろっぽい話になりました∧( 'Θ' )∧

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