▽12/06 00:52

「オミの負けだな」

ニヤリと笑ってヒカルが手持ちのトランプをテーブルの上に投げた。
散らばったトランプを見ると見事なフルハウスが出来上がっている。

「今日はつくづく運がないみたいだね」

オミはそう言って肩を竦めた。
負けたら罰ゲームなと持ち掛けられたポーカーの勝負は、ヒカルの圧倒的な勝利で終わった。

「で、罰ゲームは考えてあるんだろ?」

罰ゲーム付で勝利を仕掛けてきたのだから、元々勝つつもりでいたのだろう。
テーブルに散らばったトランプを集めながら問うと、ヒカルがより一層笑みを深めた。
いい予感がしない。
まあ罰ゲームなんだから、いいことが起こるはずもないのだけれど。

「もったいぶらずにさっさと言いなよ」
「よし、じゃあカゲミツのことを抱きしめてくれ」
「は?」

そんなことをしてヒカルに何のメリットがあるんだ?
訝しげな気持ちを隠し切れずにヒカルを見遣ると、椅子に踏ん反り返って言い放った。

「お前とカゲミツの恋人っぽいところを見たい」

だからそれを見て何になるのだ。
それに仕事場で抱きしめてみろ。
その後怒られるのは俺なんだぞ。
それも含めての罰ゲームだというのか?
脳内でぐるぐると考えを巡らせていると、ヒカルがただの興味だと付け加えた。
ますます分からない。
やはりキヨタカと付き合えているということはヒカルも変態か性悪か、はたまた両方を兼ね備えているのかもしれない。

「それでカゲミツの機嫌が悪くなったら割に合わないと思うんだけど」
「大丈夫だろ」

懸念事項を伝えると、大したことではない風に流された。
ヒカルはいいかもしれないが、こっちは大惨事なんだけど。
目で訴えてもヒカルは意に介さずといった感じだ。

「オミより俺の方が付き合いが長いんだ、信じろ」

恋人として面白くないことをさらりと言われたが事実なので口をつぐむ。
出来ないならみんなの前でキスさせるぞと更にハードルが上げられそうになったので、オミは立ち上がった。
カゲミツはいつものソファーに座って黙々とパソコンに何かを打ち込んでいる。
少なくとも今日の夕食は別々だろうなと思いながらカゲミツの後ろに立った。
さすがにみんながいる前で正面から抱きしめる勇気はない。

「…カゲミツ」
「なん、だ…!!」

すぐにグーパンチが飛んでくるだろうと覚悟していたが、それは予想外にも飛んでこなかった。
部隊の奴らが息を飲んだのがわかる。

「ちゃんと恋人っぽいね」

アラタがそうカナエに耳打ちしたのも、静寂に包まれたこの部屋では拾うことが出来た。
恋人っぽいんじゃなくて、恋人なんだけどね。
そう考えながら解放するタイミングを窺っているけれど、カゲミツは以前反応を示さない。
もしかして無視?
これは一週間は一人で食事することに狩るかもしれない。
そう思っていると、笑いを噛み殺したようなヒカルがカゲミツに声を掛けた。

「カゲミツ、オミの顔見てみろよ」

そろそろと首を回したカゲミツが、オミの顔を視界に入れた瞬間ぷっと吹き出した。
それにつられて静かだったミーティングルームにも笑いが起き始める。

「お前がいつもすましてるから照れた顔が見てみたかったんだよ」

ヒカルの言葉にカゲミツが続ける。

「お前も照れることあるんだな」

確かに二人のときは平気だけど、いや、自分に主導権があるときは平気だ。
しかし今回のようにみんながそわそわしながら見ているとさすがに意識する。
カゲミツが怒ってないことに安堵し、同時に恥じらいもどこかへ吹き飛んだ。

「もう平気だけどね」

そう言って白いままの頬にキスをしてやると、一気に首筋まで赤く染まった。

「てめぇ…!」
「いいじゃんこれくらい」

ヒューヒューと口笛を吹いて囃し立てる仲間たちに見せ付けるように今度は唇にキスをしてみせたのだった。

*

オミさんが照れるシチュエーションで考えてみたんですけど、照れるオミさんってイメージ出来なかった
ので無理矢理照れてもらいました
隊長の携帯の秘蔵コレクションに両方ともばっちり残っていると思うのでぜひとも見せて頂きたいですね

ヒカルがカゲミツにオミの照れた顔見たくないかと持ち掛けたというこっそり裏設定がありました

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