▽11/23 01:40

たまには外食を二人で食べに行った帰り道。
昨日までの温かさはどこへ行ったのか、急な冷え込みにぶるりと震えながらカナエは歩いていた。

「寒いね」

華やかな街中を抜け、バンプアップの付近は人もまばらだ。
恋人が照れ屋なことは重々承知しているが、繋いだ手をポケットに入れるみたいはベタなことだってしてみたい。
一抹の期待を込めてカゲミツを見遣ると、わかったと小さく告げて一人でずんずんと歩いて行ってしまった。
慌ててその背中を追い掛けると、カゲミツは自動販売機の前で止まってポケットをごそごそと探り始めた。

「カゲミツ君…?」
「ほれ」

ポケットから小銭を取り出し、迷うことなくボタンを押して出てきた飲み物をカゲミツは手渡してくる。
パッケージにはコーンポタージュの文字。
(そういう意味じゃなかったんだけどな…)
とは思うものの、言うことも出来ずにありがとうと受け取った。

しばらく黙って歩いていた二人だったが、カゲミツがふと漏らした言葉に沈黙が破られた。

「明日からヒートテック出さなきゃな…」

いきなり寒くなり過ぎだろと悪態をつきながら両手とも太ももをさすっている。
だからコーンポタージュの缶をカゲミツがいない方へ持ち替えて、さり気なくその手を取った。

「…何やってんだよ」

こんな街中でと言わんばかりに睨みつけてくるカゲミツを笑顔で受け流す。

「カゲミツ君があまりにも寒そうだったから」

さっきまでコーンポタージュ持っていたおかげでカナエの手はぬくぬくとしている。

「だったらそのコンポタ渡せばいいだろ」
「もう飲み切ったし冷えてきてるし、人肌のほうがあったかいよ」

それに周りは誰も歩いていないと駄目押しするとカゲミツはプイとソッポを向いてしまった。
だけど繋がれた手を解こうとはしない。

「お前の手じゃなくて、コンポタで温まってるだけだからな!」
「うん」

全く素直じゃないなと思いながら拍子を綻ばせる。
いつか繋いだ手をポケットに入れる、なんてベタなことがやれたらいいなと思いながらあとほんの少しの帰り道をゆっくりと歩くのだった。

*

カナエがカゲミツに寒いね、と言うと自動販売機で温かい飲み物を買ってくれました。

この冷静な返しがカナカゲっぽくて良いと思った結果がこれでした。

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