▽03/03 01:47

たまたま二人の休日が重なった午後。
せっかく二人っきりで部屋で過ごしているというのに、カゲミツは床に寝転がって熱心に雑誌のページをめくっている。
さっきコーヒー飲まない?と声を掛けみたら素っ気なくいらないと返されてしまった。
だから仕方なく一人でベッドに腰掛けてコーヒーを飲みながらカゲミツを眺める。
穏やかな休日といえば聞こえはいいが、これはどちらかというと味気ないという方が正しい。
ずいぶんゆっくり飲んだつもりなのにカップの中身はもう空っぽだ。
時計は午後三時を少し過ぎたところをさしている。
カゲミツを怒らせることになるかもしれないと思いながらも、カナエは意を決して立ち上がった。

うつ伏せで寝そべるカゲミツの上からゆっくりと覆いかぶさる。
おい!とカゲミツが声を上げたが構うことなく白い首筋を甘く噛んだ。

「ねぇカゲミツ君、暇なんだけど」
「そうか、っつーかどけよ」
「カゲミツ君が構ってくれるまでどかない」

そろそろグーパンチが飛んでくるかと身構えたが、予想に反してそれは飛んでこなかった。
おや?と思っているとカゲミツが読んでいた雑誌を閉じて器用にカナエの下で身体を反転させた。
いつもなら嫌がられそうなほどの至近距離にカナエが驚いていると、カゲミツが両肩を掴んだ。
全力で引き剥がすつもりかとがっかりして力を抜くと、両肩に強い力が込められた。
がくりと崩れ落ちそうになった上半身を支えるために腕に力を込め直すとカゲミツの顔が近付いてきて、サッと唇が掠めていった。
驚いて目を白黒させるカナエと、むすっとした表情のカゲミツ。
普段は自分からしてくれないキスにカナエの頭は未だ混乱状態だ。
とりあえず起き上がるとカゲミツも同じように起き上がった。

「えっと、これは?」
「おまえが構えって言ったんだろ、これで満足か?」

満足したといえば満足したが、こんなことされるともっともっとと欲求が出てくる。

「もう一回して…?」

カゲミツの手を取り絡めながらそう言うとフンとそっぽを向くきながら床は背中がいてぇんだよとベッドに腰を下ろした。
まさかまさかの事態にビクビクとしながらカナエもその隣に腰を下ろした。
今度はちゃんと目を閉じて待ってみても一向に唇が触れる気配はない。

「そんなに待たれるとやりにくいだろ」
「カゲミツ君もしたかったくせに」

そう言って肩を押してベッドにカゲミツを転がしてみても驚きの声しか上がらない。

「今日中にはやってやるよ」
「したかったことは否定しないんだ?」

いつもより素直な反応なカゲミツに調子に乗って問い掛けると弱い力で肩を殴られた。

「分かってるならおまえが構え」

おまえんち何もなさ過ぎと照れ隠しに言われてたってただただ可愛いだけだ。

「カーテン閉めようか?」
「いらねー」
「え?いいの?」
「バカ、ちげーよ!」

なんだ違うのか。
てっきりそうだと思っていると、ふいに起き上がって唇を奪われた。

「この部屋はおまえ以外なんもねぇな」

本日二度目の不意打ちなキスに目を瞬かせているとふわぁとカゲミツがあくびをして寝転がった。
ちょっと寝ると枕に顔を押し付けたのもきっと照れ隠しだ。
だからカナエもカゲミツの耳元でそっと囁いた。

「俺はこの部屋にカゲミツ君がいてくれるだけで十分だよ」

びくっと肩が揺れたのは見なかったことにして大人二人が寝るには狭いベッドにカナエも身体を横たえた。

「今日晩ご飯何食べよっか…」
「起きてから考えたらいいだろ」
「それもそうだね」

カゲミツを背中から抱き込むとさっそく小さな寝息が聞こえ始めた。

「おやすみカゲミツ君」

そう言ってカナエも静かに瞳を閉じて寝息を立て始めたのだった。

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