▽10/21 03:32

へらりと笑ってウィンクをひとつ。
なんて行動はいつも通り、なんだけど。
ふと違和感を覚えたのはきっと錯覚ではないだろう。
無言で給湯室の方に向かったトキオの背中をカゲミツも急いで追い掛けた。

給湯室に入るとトキオが気だるそうに壁に背を預けながらカップにお湯を注いでいた。
これは間違いない。

「おい」

いつもならば何?と返ってくるところだが、トキオは黙ったままだけど笑顔で振り返った。
心なしか顔が赤い気がする。

「お前さ、風邪ひいてんじゃねーの?」
「まさか」

核心をついてもそんな訳ないとヒラヒラ手を振る。
だから、強硬手段に出ることした。
カップがシンクに置かれているのを横目でちらりと確認してから、乱暴にトキオのおでこに自分のおでこをコツンとぶつけた。

「あっつ…」

予想以上の熱さに慌てて離れると、トキオはいたずらが見つかった子どもみたいに笑った。

「なんで、」
「お前がいつもより静かだったから」

その鼻声がバレないよう、出来るだけ喋らないようにしてただろ。
そう続けるとトキオは驚いたように目を丸めた後、ふにゃりと笑った。

「俺って意外と愛されてるじゃん」
「たまたま視界に入っただけだ。そんなことより帰って休めよ」
「もちろんカゲミツが看病してくれるんでしょ?」

壁に凭れかかったせいで、いつも見下ろしくる瞳に見上げられる。
だからわざわざ呼び止めたんだよね?なんて言いながら熱い手のひらが指先に触れた。

「俺じゃ役に立たないぞ」
「ほら、風邪のときは人恋しくなるって言うし、何もしなくてもいいからさ」

一緒にいて欲しいな、なんて掠れた声で言われてしまえば無下に断る訳にもいかず。
照れ隠しでばーかと返しながら熱い手のひらを握り返したのだった。

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