▽07/29 23:45
ナイツオブラウンドとの戦いが終わり、ゆっくりではあるが以前の生活を取り戻し始めたJ部隊のメンバー達。
キヨタカは崩壊しかかった組織を立て直すことに奔走しているが、代わりにJ部隊を指揮しているトキオは以前の生活が戻ってきつつあった。
通いやすさからそのまま暮らしても良かったが、監視対象でなくなったタマキとわざわざ一緒に暮らす必要もない。
「ということで引っ越ししようと思うんだけど」
「・・・、なんでそれを俺に言うんだ?」
ソファの後ろから顔を覗き込むと、心底面倒臭さそうな顔をされてしまった。
関わりたくねぇとそっぽを向くカゲミツにつれないねぇと言うも表情は変わらない。
「カゲミツ、一緒に暮らそっか?」
「はぁっ?」
突然大きな声を出したカゲミツに視線が一斉に集まる。
目をぱちぱちとさせているカゲミツににぃーっと笑い掛ける。
「だって男三人でワゴン暮らしはキツイでしょ?」
「いや、オミに出て行かせるし」
「カゲミツ、呼んだ?」
自分の名前が呼ばれて気になったらしいオミが会話に割り込んできた。
少々面倒になったなと思いつつもトキオは笑顔で答える。
「男三人でワゴン暮らしはキツイから俺の引っ越しついでにカゲミツを連れていくことにしました」
「勝手に決めんなよ」
「俺も反対だよ」
ひらひらと手を振って言うと案の定反対の声が上がったがトキオは気にしない。
「カゲミツは狙われやすいから、俺が守ってあげないと」
「頼んでねぇ!」
「俺でもできるでしょ?」
全く態度を変えない二人にトキオは切り札を出すことにした。
「隊長代理命令ね」
「はぁっ?」
「そういうのを職権乱用っていうの知ってる?」
ぎゃあぎゃあと騒ぐカゲミツの手を取り気障ったらしくをキスを落とすと、一気に二人が黙った。
「カゲミツ細過ぎだしちゃんとご飯食べないと」
それに都内で家事付き家賃なしは惹かれない?と低い声で耳元で囁く。
カゲミツの顔色が一瞬変わったのを見逃さなかった。
「今ならカゲミツが見てるそれも付けちゃう」
そう言って画面に出ている新しいパソコンを指差す。
え、と小さく呟いたカゲミツが揺れているのがよく分かる。
「「カゲミツ」」
オミとトキオに同時に呼ばれてカゲミツはばっと顔を上げた。
「ヒカルが悲しむよ」
「ヒカルには隊長がいるじゃん」
オミの言葉にもトキオは全く怯まない。
8割方勝負ありといったところか。
「なんでそこまでしてくれるんだ?」
訝しげな表情はまだ信じられないらしい。
だから、本心は隠して。
本音と建前と使い分ける。
「いつも頑張ってくれてるからだよ」
それに隊長代理としてお前の体が心配だと付け加えると、カゲミツがまた難しい顔をした。
オミはもう諦めたのか黙って成り行きを見守っている。
しばらく考え込んだ後漸く顔を上げたカゲミツは真っ直ぐトキオの目を見た。
「全部本当なのか?」
「信用されてないねぇ、全部本当だよ」
そう言っても頷かないカゲミツにトキオは強行手段に出た。
「じゃあ決定ね、引っ越しは次の休みだから」
それだけ伝えてソファーを離れるも抗議の声は上がらない。
ちらりと後ろを盗み見ると、詰め寄るオミを適当にあしらっているカゲミツが見えて胸を撫で下ろす。
本当は好きだから、なんて言ったらきっとカゲミツは逃げてしまうだろうな。
そう思いつつも隠しきれない嬉しさを抱いてトキオは仕事に戻った。
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