▽09/11 01:35
この街は夜だというのに落ち着かない。
煌びやかなネオンが光る街を見下ろしながらオミはふとそんなことを思った。
だけどこの場所はふと感じる寂しさを紛らわせてくれるようで、意外と嫌いじゃない。
夏が過ぎ、心地よくなってきた夜風に吹かれていると突然背後のドアが開く音が聞こえた。
「マスターに聞いたんだ、お前がここにいるって」
頬をかきながら当たり前のようにカゲミツは隣にやってきて、同じようにネオンが光る街を見下ろした。
「眩しいな」
そうは言いながらも立ち去ろうとする気配はない。
「一人にしてくれない?」
感傷に浸るとは柄じゃないけれど、今は一人でいたい気分だった。
「一人じゃ寂しいだろって言ったのはお前じゃねーか」
そんな昔の話。
あの頃と今は何もかもが違うのだ。
「俺は一人だからね」
あの頃持っていたものは、何もかもなくなってしまったのだ。
唯一隣にいてくれたヒサヤでさえも、もう自分を呼ぶことはない。
自嘲気味に鼻で笑うと街を見下ろしていたカゲミツがふとこちらを向いた。
「お前は一人じゃねーだろ。まず俺がいる」
きっと何の気負いもなしに出た言葉なんだろう。
だけど、じわりと胸の奥があたたかくなっていくのがわかる。
でもそれを素直に伝えることは出来なくて、つい冗談めかして返してしまう。
「何それ、口説いてるの?」
笑おうとしているのに、うまく笑うことができない。
ちょうどいい位置にあったカゲミツの背中に腕を回し、肩に顔を埋める。
「…でもありがと」
小さく告げるとあやすようにカゲミツの手が肩をポンポンと叩いてくれた。
そんなことされるのは何年振りだろうか。
背中に回した腕に力を込めるとカゲミツが小さく笑った。
「な、お前は一人じゃないだろ?」
*
いつも飄々としてるオミさんが弱るのも、それを支えるカゲミツってのもいいと思うんですよね
ちなみにこれは友愛の段階です
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