▽01/20 21:12

ふらり、ふらり。
キヨタカのおごりだと少しばかり飲み過ぎたカゲミツが不安定に身体を揺らしながら歩く。

「カゲミツ君飲み過ぎ」

そう振り返って言ったのはアラタだ。
同じように飲んでいたはずなのにケロリとした顔でカゲミツの腕をひきながら歩いている。

「いいじゃねぇか、明日休みなんだし」

と言ったらしいが呂律が回っていないので定かではない。
まさに酩酊状態だけど、カゲミツはふわふわと機嫌良さそうに笑う。
明日頭が痛くなっても知らないんだから。
と心の中で思いながらもきっと看病してしまうのだろう。
常々カゲミツはアラタを甘やかしてしまうと周囲に漏らしているが、それはアラタだって同じだ。
いろいろ譲歩してことだってあるんだ、カゲミツは気付いていないけれど。
現にほら、今だってそうだ。
大きく身体を傾かせたカゲミツの腕を力いっぱい引き寄せて抱き留めてやる。
胸元にある顔から出た吐息は顔をしかめたくなるほど酒臭い。
でも、

「カゲミツ君危ないから」
「なんだよその体制」
「おんぶしてあげる、早く乗って?」

カゲミツを離して片足を立てて屈むと怪訝そうな声が聞こえた。

「俺が乗ったら潰れちまうだろ」
「いつまでも子供扱いしないくれる?」

身長だってカゲミツはとっくの昔に抜いているし、そもそも筋力が違う。
カゲミツをおんぶして歩くなんてアラタにとってはたやすいことなのに。

「大丈夫だ」
「二日酔いになっても知らないよ」
「・・・だいじょうぶだ」

一瞬の間があったのは過去にも同じような経験があるからだ。
自分の中で葛藤しているカゲミツに駄目押ししてやる。

「乗らないならお姫様抱っこにするよ?」

一瞬大きく目を見開いて観念したように溜め息を吐き出した。
周りを見渡しても終電が終わってずいぶん経つこの時間じゃ誰もいない。
酔っているときくらい、可愛く甘えてくれてもいいのに。
カゲミツの腕が遠慮気味に首に回ったのを確認してアラタは立ち上がった。

「重くなったらいつでも下ろすんだぞ」

耳元でそう呟いた声はぶっきらぼうだけど、それが恥ずかしさからきているものだとわかる。
大丈夫だよと答えると、ムニャムニャと言葉にならない声が聞こえる。

「カゲミツ君が大丈夫じゃないじゃん」

そう呟いた言葉には返事がなかった。
大人の男にしては軽い体重と温かな体温を感じながら、アラタは二人の家へと足を進めた。

*

心地好い人肌と揺れで眠りへと誘われたカゲミツは知る由もなかった。
明日しっかりお礼はもらうからと呟いたアラタの言葉を。


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