▽12/24 18:09

泣く子も黙る丑三つ時。
珍しくベッドに入って眠っていると妙に違和感を覚えて目を覚ました。
パチッと目を開けるとそこにはいるはずのない、いやいられては困る男が昔と変わらずニカッと笑みを浮かべていた。
ヒラヒラと手を振る姿は何も変わっていない。
これはきっと身体が疲れているせいで見た夢だ。
そういえば今日、アイツの話をしたしな。
よし、夢だ。寝よう。
大きなあくびをひとつして、再び心地好い夢の世界へ旅立つために布団を被り直すとはっきりと自分を呼ぶ声が聞こえた。

「カゲミツ!カゲミツ!」
「最近の夢はリアルだな・・・」
「夢じゃないからとりあえず起きてよ」

有り得ないが身体を揺すられたような気がして仕方なく上半身を起こした。
そこにはやはり存在してはならないはずのトキオが困ったような表情を浮かべて立っていた。

「おはよう」
「なんで俺のところに化けて出てくるんだ?」

そう言ってしまったのも仕方ないことだ。
なぜならばトキオはもうこの世に存在していないからだ。
目を擦っても消えない現実に、とりあえず息をひとつ吐き出した。

ナイツオブラウンドの崩壊後、ボロボロになった警察組織がある程度立ち直ったのを機にトキオは元いたA部隊に戻った。
またしばらくはアメリカ暮らしだと言ったトキオを盛大に見送ったことをよく覚えている。
それからしばらくの時が流れ、トキオが亡くなったという知らせが届いたのだ。
死因は部下を庇って銃弾に撃たれたらしい。
最期までかっこつけやがってとタマキが泣きながらに言っていたっけ。
そんなトキオが今、目の前にいるのだ。
夢だと思いたくなるのも無理はないだろう。

「他のとこに行けよ」
「もう行ったんだけど誰も気付いてくれなかったんだよ」

いや、俺は零感なはずだぞ?
生死の境をさまよったから変な力でもついちまったのか?
一人自問自答しているとトキオが目の前で大袈裟に手を動かした。

「誰も気付いてくれない、どこに行けばいいかもわからない」
「だからってここにいるとか言うなよ」
「冷たいなぁ、カゲミツは」

むぅと膨れてみせてもちっとも可愛くなんてねぇから。
心の中でそう突っ込むとそれが顔に出てしまっていたらしい。
トキオは頬を膨らませるのをやめた。

「俺もさ、どうしたらいいかわかんないんだよ」

いつも飄々としていたトキオが情けなく眉を下げている。
こんな姿、生きているときには見たことがない。
あーっと髪をガシガシとかいてポスンと布団を叩いた。

「わかったから、うちにいたらいいだろ!」
「ありがとうカゲミツ、感謝するよ」

こうして幽霊と二人の奇妙な共同生活は始まったのだ。

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