▽11/04 20:22

ふわふわとしていて、気持ちがいい。
まるで雲の上に寝転がっているかのような心地だ。
ごろんと寝返りを打つと、恋人であるカナエの姿が目に入った。

「カゲミツ君」

名前を呼ぶ声が甘い。
ゆっくりと近付いてきた唇を目を閉じて受け止める。
なんだか心地好いから自分から首に手を回してカナエを引き寄せた。
その間も啄むようなキスが唇だけじゃなく顔全体に降ってくる。
額、瞼、鼻、頬、触れてない場所なんかないんじゃないかというくらいに。
普段の自分では考られないほど甘い雰囲気だ。
でもそれでもいいかなと思っている。
どうせここは、夢の中なのだから。
そう考えるとふわふわしたこの感覚も説明がつく。
だから普段はほとんどしないけれど、カゲミツからもキスをしていた。
どうせ自分しか知らないと思えば少しくらいは大胆になれる。
唇にちゅっとそれを当てると、カナエが目を丸めた。
見たことはあるけれど、夢の中でもこんなに鮮明に再現されるものなんだな。
そんなことを考えているとさっきまで穏やかだったカナエの目の色が変わった。
これは夜にしか見せない今はカゲミツしか知らない目だ。
もしかして欲求不満なのか?
どこか冷静な部分でそう思っていると、カナエが獣のように被さってきた。
全身に感じる重みさえがリアルだ。
それは日々感じているから身体が覚えてしまったのかもしれないけれど。
カナエは薄く開いた唇から舌を差し込み、遠慮することなく口内を動き回っている。
歯の裏を舐められてびりっとした刺激を感じ取る。
そんなところまで再現しなくてもいいのに。
本格的に欲求不満を疑っているとカナエは舌をちゅっと吸い上げた。
完全に夢の中のカナエに与えられる快感を拾い始めている。
夢中で吸い付いてくるカナエの肩を押したが腕に力が入らない。
こんなところまで再現しなくてもいい!
おまけにずっとキスされているせいでだんだん息が苦しくなってきた。
そろそろ起きる頃合いじゃないのか?
っつうか夢の中だったらもっと色々都合良く進むんじゃないのか?
やっとカナエが顔を離した隙にゆっくりと目を開ける。
そこには今し方夢で見ていたのと同じ距離でカナエがにっこりと微笑んでいたのだ。
唇が光る理由なんて、わかりたくもない。

「おはようカゲミツ君」
「お前は何してんだよ・・・」

夢の中と同じ目をしたカナエが身体全体に体重を掛けて身動きを取れないようにしている。
これはかなりよろしくない状況だ。
とりあえず距離を取ろうと思いカナエの肩を押してみてももちろん意味はない。

「起こそうと思ったらカゲミツ君からキスしてきたんじゃない」

だからてっきり誘われてるのかと思った。
いい笑顔で言われて頭を抱えたくなる。
夢だと思っていたあの行為は、すべて現実に起きていることだったのだ。
カゲミツが固まっているとカナエが首筋をべろりと舐め上げた。

「あんなことされたら理性が持たないよ」

とびっきり甘い声が耳元で囁く。
そんな声を出されたらうっかり流されちまいそうだ。
このまま事なきを得る可能性が限りなくゼロだったとしても、一応の抵抗は試みたい。

「おいカナエ」
「なに?」

ああ、耳元で声を出すな!
意図せず震えた身体をカナエが敏感だと笑った。
そのままくちゅりと耳を舐められる。

「し、しごといかなきゃ・・・」
「カゲミツ君がこの前手に入れた資料で大きなグループが潰せそうらしいんだ」

だから来たる日の任務に備えて今日は全員休養だって、よかったね。
そう笑ったカナエにカゲミツはキヨタカの顔を思い浮かべる。
(あのクソメガネめー!)
密かにキヨタカを呪っていると、カナエがふーんと目を細めた。

「何か考える余裕があるんだね」

これは絶対よくないスイッチを押してしまった。
けれど今のカゲミツに逃れる術など残されていない。
休養にとあてられた休日がかえって疲れる結果になってしまったのは、言うまでもないだろう。

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