▽09/30 15:26

「ねぇねぇカゲミツ君、こっち!」

とある休日、たまには一緒に遊んでくれとアラタにせがまれたカゲミツは二人で街中を歩いていた。
カゲミツに合わせたのか昼過ぎに待ち合わせをした二人は、軽く昼食を取ってから郊外に新しく出来たショッピングモールに来ていた。
季節の変わり目だから服が欲しいというアラタのリクエストだ。
ならばもっと適任がいるんじゃないかとカゲミツは言ったものの、アラタはカゲミツ君じゃなきゃ嫌だと言い張ったので今ここにいる。
新しく出来ただけあって人が多い。
些か疲れ気味のカゲミツとは対照的にアラタのテンションはずっと高いままだった。
早くと急かすアラタについていくとそこには話題のアイスを売っている店があった。

「これ並ぼうよ!」

年相応に笑うのを見せられてしまえば嫌とは言えず。
二人で行列の最後尾に並んだ。

「このアイス、タマキちゃんも食べたいって言ってたんだよ」
「ならお土産に買って帰るか」
「ダメだよ、アイスが溶けちゃうもん」

僕達だけの秘密だよ、と悪戯っぽく笑うアラタに頷いてみせる。
まるで弟が出来た、そんな気分だった。

*

「カゲミツ君、次はあっち!」

次にアラタに手を引っ張られてきたのはゲームセンターだった。
UFOキャッチャーやら対戦ゲームが並ぶところをすり抜けて、アラタは目的を持っているかのように足を進めていく。

「どこ行くんだよ?」
「これだよ」

カゲミツの問い掛けに、アラタは足を止めて答えた。
大勢の女子高生達がきゃっきゃとしていて居心地が悪い。
アラタがこれだと指差したものはいわゆるプリクラというものだった。

「写真を現像すればいいだろ」

居心地の悪さから早くここを抜け出したいカゲミツが困ったように呟くと、アラタがしゅんとした顔を見せた。

「僕、プリクラ撮ったことなかったから一度撮ってみたかったんだ」

カゲミツ君も撮ったことなさそうだったからいいかなって、そこまで言ってアラタは掴みっぱなしだったカゲミツの手を離した。

「カゲミツ君が嫌なら仕方ないね」

悲しそうに諦めの表情を浮かべられると嫌だと押し通すことも出来ない。
つくづくアラタには甘いと思う。
そう思いながらも一回だけだぞと約束をして、女子高生達に混じって待機列に並んだ。
そして二人の番はやってきた。
わたわたとしているカゲミツをよそにアラタがコインを入れて撮影が始まった。

「カゲミツ君、こっちのカメラだよ」

こっち見てというアラタの指差す方向を見るとパシャッというシャッター音とともにフラッシュが光った。
すぐさま画面にその写真が出てくる。

「カゲミツ君、マヌケな顔!」

あははと笑いながらもアラタは次はこっちだと違う方を指差す。
今度は間に合ったが、真顔になってしまった。

「カゲミツ君、もっと笑ってよ」
「そうは言ったってなぁ」

そんなことを言っているとまたアラタが指差した。
そっちの方を見ていると、アラタが突然抱き着いてきた。

「な、何するんだ!」
「こういうポーズだよ」

背後から抱き着くアラタと焦ったような顔をしながらピースをしているカゲミツが画面に写し出される。

「あ、カゲミツ君これいい感じだよ」

今度は抱き着いていた腕を肩に回した。
はいチーズという掛け声とともにアラタの唇がちゅっとカゲミツの頬に触れる。

「アラタ!」
「女の子同士ではよくあるポーズなんだって」

画面に写し出された写真を見ながらアラタが満足げに笑う。
次がラストだという掛け声にカゲミツが最初と同じようにピースを作ると、今度はアラタが唇にキスをしてきた。
突然のことに目を見開いているとフラッシュが光り撮影が終わった。
さすがに悪ふざけが過ぎると怒ろうとしたけれど、次の人が来るからとアラタに引っ張られてしまった。
次にカーテンをくぐると、大きな画面にペンのようなものが置かれていた。

「ここでどの写真をプリクラにするか選ぶんだって」

初めてと言うわりにはやたら慣れていることにカゲミツは気付かない。
これとこれとと写真を選ぶアラタにすっかりキスされた怒りもひいてしまっていた。

「じゃあこの写真にらくがきしてね」

写し出された笑顔のアラタと真顔の自分。
らくがきしてねと言われても。

「何書いたらいいんだよ」
「名前とか?」
「なんで」
「そういうものらしいよ」

楽しそうにペンを動かすアラタに諦めてカゲミツは言われた通りに名前を書いた。
だからなんだ?

「あとは日付とか。スタンプもあるよ!」

アラタの言われた通りに日付を書いてスタンプを押している間にどうやら制限時間がきたらしい。

「僕とカゲミツ君の分だけあればいいよね」

アラタがそう呟きながら画面を操作すると、出口で待っててねという案内が聞こえた。
二人が出ると、入れ替わりに女子高生が入ってきた。

「せわしないな」
「そうかな?」

そんな会話をしていると、ポトンと音を立ててシールが出てきた。
こっちだよと言って歩き出したアラタの背中を追い掛ける。

「こっちがカゲミツ君の分ね」

渡されたのは今撮ったばかりのプリクラだ。
頬や唇にキスされているのを選ばれていたが、楽しかったねとアラタに言われると怒る気にもなれない。

「僕も大切にするからカゲミツ君も大切にしてね」

そう言って財布の中にしまったアラタにならってカゲミツも財布の中にしまう。

「今日はすっごく楽しかった!ありがとうカゲミツ君!」

ニコリと笑って差し出された手を仕方ないなと思いながらも取った。

「また遊んでね」
「ああ、またな」

そう言いながら二人は家路についたのだった。

*

後日、たまたまカゲミツのプリクラを見てしまったヒカルが驚いたり、オミが密かに闘志を燃やしたり、次は舌を入れちゃおっかなと考えたアラタがいたのはまた別のお話。

*

子供アラタにせがまれたらノーとは言えない意外とお兄ちゃん気質なカゲミツはいいと思いませんか!(真顔)
そこに子供の顔して付け込んじゃうアラタは萌えると思いませんか!←
実はカゲミツ大好き(恋愛的な意味で)だけど子供の振りして徐々に手中に収めようとする策士なアラタはいいと思うんです
そしてそれに気付かない鈍感なカゲミツもいいと思うんです(`・ω・´)

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