▽07/25 19:59

カゲミツが風呂から上がってリビングの扉を開けると、真っ暗な部屋にテレビの光だけが浮かび上がっていた。

「何やってんだ・・・?」
「今テレビで怪談特集やってるんだ」
「暗い方が雰囲気が出るだろ」

ソファーの上に固まって座っている二人を見てカゲミツがため息をつく。
なぜ人はわざわざ怖いと思っているのに見たがるのだろうか。
カゲミツにはその気持ちが理解出来ない。
昔っからカゲミツは怖い話が大の苦手だったのだ。
怖くないけど興味がない、そういった素振りを見せて部屋を出ようとする。

「俺はもう寝る」
「実は怖いんじゃないの?」

しかしオミの一言によってカゲミツの動きが止まった。
本当は怖いけど、ここで出るとそれを認めてしまうようなものだ。
いい大人がお化けが怖いなんて格好悪い。
目に見えないものなんて存在する訳がないんだ。
カゲミツはそう自分に強く言い聞かせて、オミの隣に座った。

テレビで話す男はぼさぼさの髪でぼそぼそと聞こえ辛い声で話している。
(お前がお化けみたいだよ)
カゲミツが心の中で悪態をつく。
その途端、男の引きつった顔がアップになってカゲミツは小さく悲鳴を上げた。

「カゲミツ、痛い」

しかもその拍子に隣にいたオミの腕を強く掴んでしまっていたらしい。
少し不機嫌なオミの声に小さく謝って手を放した。
そうこうしていると、その男の話は終わっていてカゲミツがホッと胸を撫で下ろす。
しかしそれもつかの間、その番組はまだ始まったばかりのようで次の出演者が怪談を話し始めた。
静かな口調で語られる話に思わず背中がぞくりとしてしまう。
突然、画面の中から大きな悲鳴が聞こえてカゲミツの肩が大きく跳ねた。

「カゲミツ、もしかして本当に怖いの?」

すぐ上から聞こえたオミの声に顔を上げて、カゲミツは初めて自分の状況を理解した。
無意識のうちにオミの体にぎゅっと抱き付いてしまっていたのだ。
うわぁと大きな声を上げそうになった口をオミが手で塞ぐ。

「ヒカルはテレビに夢中だから、このままで大丈夫だよ」
「怖いなんか言ってないだろ」

この期に及んで強気なカゲミツにオミが小さくため息をついた。

「じゃあ俺が怖いことにしとくから」

もう少しこのままでいさせて、オミはそう言うとカゲミツの背中に腕を回した。

「仕方ないな」

そう言ったカゲミツの声は明らかに安堵の色が混じっていて。
そんなところも可愛いと思ってしまう自分に笑って、カゲミツの体にぎゅっとひっついた。


ヒカルはお菓子を食べようと口を開けたまんま止まっていればいいと思います←

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