▽08/25 01:28

向かい合って対峙した彼はかつて向けてくれた暖かい眼差しとは正反対の目をしていた。
恐らく初めて人に向けたそれの照準を自分に合わし、震える指を隠そうとしながらトリガーに指をかける。

「二度と顔も見たくねぇと思ってたのに・・・」

ぽつりと吐き出された言葉も少し震えていて、その気持ちに嘘がないのだと思い知らされる。
かつてはあんなに愛し合いずっと隣にいろよと言ったその口が言うのだ。
"リニット"の仮面を脱ぎ"カナエ"の顔で困ったように笑ってみせる。
するとカゲミツは心底嫌そうな顔を見せた。
それにはさすがに傷付いた。
カゲミツにそんな顔をさせているのは紛れも無く自分のせいだと自覚しているけれど。

「随分と嫌われたもんだね」

そう言ってカツンと音を立てて一歩カゲミツに近付く。

「近寄るな!」

前を向いたままカゲミツが一歩下がる。
手にした拳銃をぎゅっと握り直す。
威嚇するつもりだったんだろうけどそんなものはカナエには通用しない。

「ずっと隣にいろって言ったのはカゲミツ君のくせに、つれないな」
「・・・お前が裏切ったくせに何言ってんだよ」

頭に銃弾を撃ち込んで意識不明のまま半年も眠らせた挙げ句、目を覚ましたらタマキと一緒に逃走していました。
それはカゲミツに対する裏切りとしか言いようがない。
二度と顔を見たくないと言われるのも当然の仕打ちだと思う。
けれど。

「俺だって連れ戻されて死ぬ寸前までいったんだ」

だから俺ともう一回会えたことを喜んでよ。
そう言ったらカゲミツの顔が沸騰したように赤くなった。
怒らせてしまったなと頭の片隅で考える。
パンッと乾いた発砲音を立てて飛び出した弾丸は、カナエの遥か上空を飛んでいった。

「射撃の腕は悪くないのにね」

やっぱり人に向けるとなると違うのだろう。
それにカゲミツは根が優しい。
いくらどんなに疎み嫌っている相手でも銃を向けることに躊躇っているようだ。
今度は足を止めずにカゲミツに近付く。

「俺はカゲミツ君に許してもらおうなんて思ってないよ」

焦ったカゲミツは銃を向けることも忘れ後ずさっている。

「でも時々思うんだ」

カゲミツの背中に冷たい壁が触れた。
ドッと冷や汗がふきだす。
カナエの両腕に挟まれて顔を逸らすことが出来ない。

「あの頃に戻れたらなって」

耳元に唇を寄せて、あの頃みたいに囁く。

「俺はカゲミツ君が好きだよ」

そう言って銃を握ったカゲミツの手を取る。
そしてカナエはその銃口を自分の心臓に向けた。

「撃っていいよ」

カゲミツ君に殺されるなら本望だ。
静かにそう言ったカナエをカゲミツが泣きそうな顔で見つめる。
コクンとカナエが頷いたのを確認し、カゲミツは握り締めた銃にぎゅっと力を込めた。

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