▽07/09 15:14
「あれ、他の奴らは?」
カゲミツが風呂から上がると、四人部屋のそこにはカナエしかいなかった。
肩にかけたタオルでガシガシと髪を拭きながら尋ねるとカナエがふわりと微笑んだ。
「タマキ君のところに行ったよ」
「お前も行けば良かったのに」
「風呂上がりに誰もいなかったらびっくりするでしょ?」
それなら書き置きでもしておけばよかったのに。
そんなカゲミツの考えを読んだのかカナエがすっと耳元に唇を近付けた。
「本当はカゲミツ君と二人でいたかったから、だよ」
友達の前では決して見せない、カゲミツしか知らない甘い声で囁く。
これはよくないと咄嗟に距離を取ろうとしたカゲミツだったが相手の方が早かった。
逃げようとした腰を引き、腕の中にカゲミツを閉じ込める。
首元に顔を擦り付け、すんすんと匂いを嗅いでいる。
いつもと違う匂いだとふふっと笑って呟いた。
「あいつらが帰ってきたらどうするんだ・・・!」
「さっき行ったばかりだからすぐに帰ってこないよ」
でもだの話を聞けだのと騒ぐカゲミツを横にあったベッドに押し倒した。
見開かれた琥珀色の目がとても綺麗だ。
「お前、何考えて・・・!」
「カゲミツ君が今考えたようなコト」
カゲミツを押さえ付けるように馬乗りになって抵抗をやめない手はベッドに縫い付けた。
耳にフッと息を吹きかけると、サッと顔が赤くなって一瞬抵抗が止んだ。
カゲミツはこうされると弱い。
それがわかっていてカナエは次の弱点を狙った。
嫌々と振っているせいで曝された首をべろりと舐め上げる。
ヒッと小さな悲鳴を上げて恥ずかしそうにカゲミツは口を結んだ。
「カゲミツ君もその気になってきたでしょ?」
「んなこと、あるかっ」
目は口ほどにものを言うとはまさにこのことだ。
少し潤んだ目で睨まれたって説得力はない。
カゲミツの両手をひとまとめにして、空いた片手で熱の上がった頬に触れる。
この期に及んでまだやめろと喚く口を自分のもので塞いだ。
簡単に侵入できたカゲミツの口の中で舌を遊ばせる。
上あごをくすぐり、歯茎をゆっくりとなぞる。
逃げ回るカゲミツの舌を捕まえてねっとりと絡ませる。
それから舌を軽く吸い上げると両手を束ねる指に爪を立てられた。
それを合図にカナエが上体を軽く起こす。
「爪立てちゃうくらい気持ち良かった?」
「ち、げーよ・・・」
顔を見られたくないのか、背けながらカゲミツが言う。
おかげで曝されたうっすらと赤く染まった首筋がどれだけ煽っているのか気付いてほしい。
溢れそうな欲望をごくりと唾液と一緒に飲み込んでカゲミツの腕を解放した。
これ以上この体勢でいるのは目に毒だし、ちらりと時計に目をやれば決められた就寝時間はもうすぐだ。
同室の二人が戻ってくる頃だろう。
それにこれ以上続けるとカゲミツの機嫌を損ねることになる。
修学旅行の残り日数はあと二日、どうせなら楽しい思い出にしたい。
いつの間にか手繰り寄せていた枕に顔を押し付けるカゲミツの髪に触れた。
「もうすぐ就寝時間だよ」
「だからなんだ」
俺はもう寝るとくぐもった声が聞こえる。
やはり臍を曲げてしまったか。
だから機嫌を窺うようにカゲミツの背中に被さった。
そっと耳に唇を寄せる。
「二人が帰ってくるまでにもう一回、」
キスしたいな。
息を吹き込むように言うともぞりとカゲミツが身じろいだ。
「一回だけだからな」
ムッとした言い草なのは照れているからだ。
それでも黙って目を閉じたのは、つまるところカゲミツも同じ気持ちだったのだろう。
だから両手で頬を挟み、ゆっくりと唇を触れ合わせたのだった。
*
「中から変なのは聞こえないね」
「でも開けるの怖ぇーよ」
その頃二人の部屋の前では、ヒカルとオミがドアに耳を当てていた。
カゲミツが風呂に入っている間に体よく追い出された二人がそわそわしながら中の様子を窺っている。
「大丈夫なんじゃない?」
「でも何かあったら嫌じゃん」
「でもここにいてキヨタカに見付かるのも嫌だろ」
「そりゃそーだけどさ」
そんな押し問答を繰り返した後、思い切って開いたドアの向こうではカナエとカゲミツがすやすやと寝息を立てていた。
「ほら、いくら若くてもTPOくらい弁えてるよ」
「二人で同じベッドで寝てんのにかぁ?」
「許容範囲だろ」
早々にベッドに入ったオミがもう寝る準備万端で電気のスイッチに手をかけている。
「ま、そうだな」
ちらりと覗いたカゲミツの幸せそうな寝顔にヒカルもいそいそと自分のベッドに潜り込んだのだった。
*
学パロはロマン←
カゲミツはみんなに知られてないつもりですが、実はみんな知ってるよっていうね
そしてキヨタカは先生です
ちゃんと寝てるか見回りにくるあれですね
起きてるのを見付かったらとんでもないお仕置きをされそうですね←
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