▽06/12 02:27

「ごめん、やっぱりカゲミツの気持ちには応えられない」
「そっ、か・・・」

カゲミツは顔を俯かせ、耐えるように拳をぎゅっと丸めた。
二人っきりのワゴン車を重い沈黙が包む。
重い空気に耐え切れず、タマキが口を開こうとしたときにカゲミツが顔を上げた。

「なんとなく、わかってたから」

だから大丈夫だ、ありがとう。

その表情は笑っているけれど、無理をしているのだと見て取れた。
だけどあえてタマキは気付かない振りをしてカゲミツにこう言った。

「これからも親友でいてくれるか?」
「当たり前だろ」

そう微笑んだカゲミツは無理をしているようには見えなくて。
これからもよろしくなと差し出した手に、一瞬躊躇ったことに気付くことが出来なかった。

「悪い、まだやんなきゃいけねぇことがあるんだ」

握手を交わした後、申し訳なさそうに言ったカゲミツに謝ってワゴン車を出た。
そのドアが閉まる瞬間に見てしまったのだ。
くしゃりと今にも泣き出しそうに歪められたカゲミツの顔を。
今まで見たこともないくらい痛々しいその表情を。

*

翌日出勤すると、カゲミツがソファーに座ってパソコンを触っていた。

「おはよう、カゲミツ」
「おはよ」

挨拶を交わす声はいつもと変わらない。
けれどふと目に入ったカゲミツの目元は、泣き腫らしたのか真っ赤になっていた。
カゲミツを傷付けるつもりはこれっぽっちもない。
しかし実際はパッと見てわかるほどに目を赤くさせているのだ。
声を掛けようか、でもどう声を掛ければいいのだろうか?
悩んでいるうちにキヨタカがやって来て、結局声を掛けられないままタマキは席についた。

キヨタカの説明を聞いている間にもちらりとカゲミツを盗み見る。
ぼんやりと覇気のない表情は間違いなく自分のせいだ。
気持ちに答えてやることは出来ない。
けれど立ち直る力添えくらいは出来るんじゃないだろうか?
自分のやるべきことが見えたタマキは、よしと小さく拳を握り締めた。

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