▽03/28 00:10

初めてキスをしたのは、二人で酔っ払った夜のことだった。

追っていた組織の重大な情報を手に入れたその日、二人は打ち上げと称してワゴン車に酒を買い込んでいた。
ここのところ寝る暇を惜しんでまでその情報を探していたのだ。
少しくらい、羽目を外したって許されるだろう。
ヒカルにも声を掛けたが、キヨタカのところに行くと断られてしまった。

「いいよなぁ、ヒカルは」
「相手はあのメガネだけどね」
「でも幸せそうじゃん」

出掛ける際に見せたはにかむようなヒカルの笑顔を思い出す。
普段はカゲミツと一緒になって色々言ったりもするけれど、結局はキヨタカのことが好きなのだ。
酔ってきたのか、くだをまくカゲミツが突然オミに寄り掛かる。

「俺も恋してぇー!」

そう叫んで体重を預けてきたカゲミツの顔をちらりと見遣る。
ふいに二人を沈黙が包む。
見上げたカゲミツの綺麗な琥珀色から目が離せない。
視線が絡まり、二人の距離がゆっくりと近付きやがてゼロになったのは必然のように思えた。



それからカゲミツとはふとした瞬間にキスをするようになった。
それは二人きりのワゴン車だったり、パソコンを教えてもらう為に行ったカゲミツの家だったり。
互いにキスしよう、なんて言葉は口に出さない。
ただしたいと思った時にはカゲミツが目を閉じて待っているのだ。
そして一瞬唇を重ねた後は普段の二人に戻る。
なぜとか、どうしてとか理由は問わない。
まるで何事もなかったかのように仕事に戻るのだ。

カゲミツがこの関係をどう思っているのかはオミにはわからない。
聞いてみたいけれど、今まで何事もなかったかのように振る舞っていたせいで今更聞けない。
それに聞いたらこの心地好い距離感が崩れてしまうかもしれない。
オミは元々カゲミツに好意を抱いていたのだ。
どういう理由でキスをするような間柄になったかはわからないが、嬉しくない訳がないのだ。
最初はただ唇が触れるだけで良かった。
でも人間というのは欲深い生き物で、ひとつを手に入れるともっともっと欲しくなってしまう。

いつものようにキスを交わし、お互い仕事に戻る。
もっと長く、もっと深くキスをしたい。
最近キスの後にそんな考えが頭を占めるようになってきた。
この関係は心地好いが、ずっとこのままでいる訳にもいかない。
まるで生殺しのようなこの状態に、そろそろオミも耐えられなくなってきていたのだ。

「カゲミツ」
「なんだ?」

パソコンを触る手を止め、カゲミツの方を向く。
カゲミツは他愛もない話だと思っているのか、パソコンから目を離そうとしない。

「こっち向いてくれる?」

そう言うとカゲミツはようやくパソコンから離れた。
イスにもたれながらオミの言葉を待っている。

「俺達って、付き合ってるんだよね?」

意を決して口を開いた。
好きでもない同性の奴と、普通キスなんてしない。
オミはカゲミツだから受け入れたのであって他の奴なら殴ってでも止めている。
それにキスをするようになってから、以前よりも二人で過ごす時間が増えたのだ。
もしこれが自惚れだったとしても、冗談だと言ってしえば話は終わる。
本気でカゲミツが好きだという事実を知らせずに終わることが出来る。
ドキドキを悟られないように、ごくりと唾を飲み込んだ。

「いつから?」

しかし返ってきた答えはオミが考えていたどの答えとも違っていた。
それが肯定なのか否定なのかを判断出来ない。
頭に描いていた話の流れがすべて吹き飛んでしまった。
だから浮かんだ言葉をそのまま口に出した。

「今から」
「わかった」

あまりにもあっさりと言われたので、それが了承だと気付かなかった。
カゲミツが名前を呼んで、服の袖を少し引っ張る。

「何ぼーっとしてんだよ」

目を閉じて待っているカゲミツに、ようやく「わかった」の意味を理解したのだった。

*

∞コン@名古屋の横山恋バナMCに萌えたぎって脚色を付け加えた結果これです(・ω<)☆←

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