▽06/10 00:26

誰よりも早くミーティングルームに着いたと思っていたら、そこには既にソファーに体を預け気持ち良さそうに眠る先客がいた。
だらしなく口を開けて眠る彼の髪はブラインドから差し込む光にキラキラと輝いていて。
顔を覗き込むと普段の口の悪さが嘘のような整った顔立ちをしていた。

(さすが西洋人形様だな・・・)

ヒサヤが、彼はそう呼ばれていたと言っていたが納得だ。
黙っていればきっとモテるだろうなと思う。
同時にオミが彼に執着しているのも分かった気がした。

「綺麗過ぎるんだよ、カゲミツ君は」

柔らかな髪にそっと指を通しそのまま頬に触れる。
ぴくんと体が跳ねたが、まだ起きる気配はなさそうだ。
そのまま観察を続けていると、へにゃりとした顔で笑った。
いい夢を見ているのだろうか。
ジッと見つめているとタマキ、と小さな声が聞こえた。
あぁ、それは幸せそうな顔をするはずだ。
何しろカゲミツ君はタマキ君が大好きだ。
あんなに分かりやすい態度なのにバレてないと思っているところが、・・・正直可愛いと思う。
あんなにカゲミツ君から愛情を注がれているのに、気付く素振りも見せないタマキ君には・・・少し嫉妬する。
まぁ俺が嫉妬したところで二人は変わらないだろうけど。
カゲミツ君は仲間というより、ライバルという認識のようだし。
いつも敵意剥き出しな態度にはさすがに傷付く。
でもまさかカゲミツ君は、俺が好きだなんて思う訳ないだろうしね。
そんなことを考えていると、急にカゲミツ君の声が聞きたくなった。
黙っていると綺麗さが際立つけど、やっぱり口が悪くても元気なカゲミツ君がいい。
早く目を覚まして欲しくて、薄く開いた唇に自分の唇を押し付けた。
んっ、と鼻から抜けた声が想像以上に色っぽくて面食らった。
ただ合わせるだけでよかったはずなのに、もっともっとと欲しくなってしまう。
これ以上はダメだと分かっているのに、薄く開いた唇に誘われるように舌を入れてしまった。
歯列をゆっくりとなぞると、苦しそうに眉を寄せるカゲミツ君の顔が見えた。
それすら色っぽく感じてしまうなんてマズイな。
名残惜しかったが、ちゅっと音を立てて唇を離した。
いよいよ目を覚ますかと思って待ち構えていたが、数秒経っても琥珀色の瞳は見えなかった。
よっぽど疲れているのか、また規則的な寝息を立てはじめた。
まぁ起きて最初に見た顔が俺だとカゲミツ君の機嫌が悪くなりそうだけど。
それでも寝起きのカゲミツ君を見たかったな、なんて思ってまた髪を触る。
またもやタマキと呟く口に軽くキスをして、ミーティングルームを出た。
今日は早く来過ぎたし、少し散歩でもしよう。
降り注ぐ朝の太陽の下、さっき触れ合った唇をなぞって一人ぼんやりとする。

(触れるだけで気持ちが伝わればいいのに)

相手は寝ていたし、そんなこと有り得ないって分かっているけどそんなことを願いたくなってしまった。


(出来るなら、もっと違う形で出会いたかったよ)

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