▽03/13 20:06

「今度は甘いものがいいな」

そう言ってニッコリ笑ったキヨタカの顔を思い出してタマキは溜め息を吐き出した。
一ヶ月前、悩みに悩んだバレンタイン。
それは確かに甘いひと時だったけれど、タマキにとっては新たな苦悩の始まりの日でもあった。
キヨタカが甘いものを食べているところはほとんど見たことがない。
コーヒーはブラック、紅茶もいつもストレートで飲んでいるからてっきり甘いものが好きじゃないのだと思い込んでいた。
そんなキヨタカから甘いものとリクエストされても何をプレゼントするべきなのかちっとも考えつかない。
おまけにカゲミツとヒカルの会話でとんでもないことを聞いてしまった。

「バレンタインのお返しは3倍返しが基本だぞ」

キヨタカのプレゼントの値段なんて分からない。
ただ自分が簡単に手を出せるような物じゃないことだけは確かだ。
あの3倍返し・・・はっきりいってタマキの出せる金額ではない。
もちろんキヨタカはそんなことは気にしないだろう。
金額が無理なら、せめて気持ちだけでも。
そう悩んでいるうちに一ヶ月という日はあっという間に過ぎてしまった。

そしてホワイトデー当日。
バレンタインのとき以上にドキドキとしながらキヨタカの家に向かった。
一ヶ月前と同じように食事を終え、ソファーに座る。

「あの、バレンタインのお返しなんですけど」
「あぁ、楽しみにしていたぞ」

笑顔でそんなことを言われてしまえば、後ろ手に隠したプレゼントを渡しづらくなってしまう。
それでも渡さない訳にはいかず、両手で小さな包みを差し出した。

「これは?」
「ウイスキーボンボンです」

いつもウイスキーを飲んでるし、これなら気に入ってもらえるかと思ったんですけど。
だんだん自信がなくなってきて、語尾が小さくなってしまった。
キヨタカの反応を窺うためにちらりとその顔を見上げると、フッと笑われてしまった。

「やはりそのままの意味で受け取ったか」
「・・・どういうことですか?」
「モノより甘いものが目の前にあるだろ?」

そう言われてもタマキの頭は理解出来ない。
意味が分からなくて小さく首を傾げると、キスされると思うくらいキヨタカの顔が近付いてきた。
唇まであと数センチという距離でキヨタカが口を開く。

「俺にとって一番甘いものはタマキ、お前だ」

その言葉の意味を理解した瞬間、一気に顔に熱が集まる。
この距離でそんな台詞をあんなに低い声で言うなんて反則だ。
ぎゅっと目をつむってみても、いつまで経っても唇は落ちて来ない。

「お返しなんだから、タマキからして欲しいんだが」

耳に息を吹き込むように囁かれ、身体がぶるりと震える。

「お、俺もバレンタイン渡したじゃないですか・・・!」
「タマキがお返ししてくれたら、俺もしっかりとお返しさせてもらおう」

そう不敵に笑われてしまえば抗う術などタマキには持ち合わせていない。
恥ずかしさを堪えて自分からキスをすると、満足そうに笑うキヨタカの顔が目に入ったのだった。

*

書く気はなかったけど書いてみたら案外楽しくなっちゃった、っていうね!

ちなみにヒカルとカゲミツがなんでそんな話をしてたかというと・・・
バレンタイン、当然オミさんに何も用意してなかったカゲミツ
それも予想した上でプレゼントなどを用意していたオミさん
「ホワイトデーは期待してるからね」
焦ってヒカルに相談、3倍返しにおののくくカゲミツ
という裏設定でした(`・ω・´)

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