▽07/16 22:27
カゲミツと顔を合わせたくない。
自分ももちろんだがカゲミツもそうだろう。
このまま部屋で眠ろうかとも思ったけど眠れそうになかった。
暫く思案した結果、バンプアップに行くことにした。
もう少し飲んだら眠くなるかもしれない。
「こんな時間にどうした?」
驚くマスターに軽く会釈をしてカウンターに腰を下ろす。
今は誰とも話したくない。
「酔いたい気分なんだ」
だから一番きついのとオーダーして目を伏せる。
マスターの戸惑った声は聞こえないフリをして。
差し出されたグラスに口をつけると、さっきの飲んだ酒の味が思い出されて顔を歪ませる。
なぜ、どうして、自己嫌悪が止まらない。
「あんまり思い詰めるなよ」
マスターがくしゃりと髪を撫でて裏へ引っ込んだ。
一人になりたい、そんな気持ちを察してくれたようだった。
何度目かになる重いため息を吐き出したとき、ドアの開く音が聞こえた。
こんな時間に誰だ、そう思って音の方を見て、息を飲んだ。
そこには、今一番顔を合わせたくない人物が立っていた。
「カゲミツ・・・」
もしかして探してくれてたのかと考え首を振る。
そんなことある訳ない。
じゃあなぜ?
酒を飲みたかっただけか、じゃあ自分がここにいるのは邪魔だ。
「お代ここに置いてるって、マスターに言っておいて」
カウンターにお代を置いて立ち上がる。
カゲミツの顔を見ないように脇をすり抜けようとしたら腕を掴まれた。
「待てよ」
「嫌だね」
大した力じゃないのに振りほどけないのは、まだカゲミツを諦められないからか。
掴む腕に力を込められたが痛くはない。
「放せよ、・・・俺の顔なんて見たくないだろ?」
自嘲気味に笑ってもカゲミツは何も答えない。
でも腕は解放する様子はなさそうだけど。
何が言いたいのか分からずに困惑する。
いっそ泣いて喚いて嫌いだと言われた方が潔く諦められるのに。
「カゲミツ、」
「最後まで責任持って慰めてくれるんだよな?」
グッと空いてる手で襟を掴まれカゲミツに引き寄せられる。
その勢いのままカゲミツの唇が掠めていった。
驚いて目を瞬かせると真っ赤な顔をしたカゲミツが目に入った。
「お前を信じるから、」
慰めてくれよ、全部忘れられるまで。
そう言って掴んだ襟をぎゅっと握り締めたその手に、自分の手を重ねた。
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