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窓から差し込む月の光がやんわりとカゲミツの綺麗な金髪を照らす。
日中太陽の光に照らされるのも美しいが、こうやって月の光に照らされるのもまた神秘的な感じで美しい。
スヤスヤと穏やかな寝息を立てて眠るカゲミツのその髪に指を通す。
自分と同じシャンプーを使っているはずなのに、驚くほどさらさらとしている。
心地がよくて何度も何度も往復させていると、ある一点に触れてしまった。
その瞬間、今まで溢れていた幸せな気持ちが嘘みたいになくなった。
ゆっくり、ゆっくりと傷口をなぞると眠ったままカゲミツが顔をしかめた。
気にならないと言っているけれど、やはりまだ痛むのだろうか。
ぎゅっと締め付けられた胸の痛みに目を細める。
そして目の前に広がるのはあの日の光景だ。
赤い海にいつも以上に顔を白くさせて横たわるカゲミツ。
怖くなって手に力を入れようとして、自分が何か持っていることを思い出す。
恐る恐る手を持ち上げると、そこには彼を撃った拳銃がしっかりと握られていて小さく悲鳴を上げた。
目の前にいるのは目を閉じて人形のように動かない恋人。
しかしその恋人人を血の海に沈めたのは紛れも無く自分だ。
仕方なかったんだ、だからって。
受け入れたくない現実を目の前に一歩後ずさると、どすんと尻餅をついてしまった。
叫ぶ訳にはいかないのに、大声で泣いて叫んでしまいたい。
人を撃ったことだって、ましてや殺してしまったことだって初めてではないのに。
引き金をひいた感触が指にこびりついて離れない。
カゲミツと付き合っていたのはスパイ活動のひとつだ。
そう思ってもカナエは自分の動揺を隠しきれなかった。

あぁ、なんてことをしてしまったんだ。
あの時と同じように横たわっているカゲミツの傷口にもう一度触れる。
驚愕に見開かれた琥珀色の瞳をずっと忘れることが出来なかった。
自分の気持ちで生きて、再び恋人同士となった今でも。

まるであの時のようにカナエが息を詰めていると、カゲミツがゆっくりと瞼を上げた。
傷口に触れる手に、自分の手を重ねる。

「んなこと忘れて早く寝ろよ」

むにゃむにゃと寝言みたいにそれだけ告げてカゲミツはまた眠たそうに瞼を閉じた。
寒いのか擦り寄ってきたカゲミツの背中におずおずと腕を回す。
温かさが気持ち良かったのか幸せそうに微笑んだのを見て、カナエもゆっくりと瞳を閉じた。

*

もう一度付き合い始めたとき、全部忘れてやると言われたのに時々思い出しちゃうカナエ
夜に思い出しては後悔しているカナエを知ってて、今目の前にある幸せだけを見てくれればいいと思っているカゲミツ
カナエにとってカゲミツを撃ったことは今まさに起こったことのように思い出してしまうから、誰か過去形にしてくださいっていうカゲミツの願い的な感じで読んで頂ければ嬉しいです

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