▽11/01 00:41

「オミィ〜」

甘ったるい声で名前を呼び、人前だというのにすりすりと擦り寄ってくるのは恋人であるカゲミツだ。
白い肌は赤らんでケタケタと笑う姿は普段とはまるで違う。
そう、カゲミツは酔っ払っているのだ、それも相当に。
満面の笑みを浮かべなから、両手を指先でつつくなんて甘えたこと、素面ならば絶対にしない。
それを嬉々とした表情でやられては少し面食らってしまう。
こそっと随分と酔ってるねと耳打ちしてくるカナエに小さく頷く。
それがカゲミツの気に障ったのか、ぎゅっと抱き着いてこられた。
突然のことに身体を支える余裕もなく大きな音を立てて倒れ込んでしまう。
上から覗き込んでくる顔は小さな子供のようにむぅと膨れている。
そんな表情まで愛おしいというのに、カゲミツはポカポカと弱い力で胸を殴ってくる。

「カナエと何内緒話してんだ」
「内緒話なんかじゃないよ」
「カゲミツ君は本当にオミのことが好きなんだね」

そんなやり取りを見てクスクスと笑っていたカナエが口を挟んだ。
いくら酔っ払って甘えてきているとはいえ、こんなことに素直に頷くカゲミツではない。
半ば諦めた気持ちで成り行きを見守っていると、億劫そうにカゲミツがカナエの方を向いた。

「当たり前だろ、分かってんなら邪魔すんな」

きっぱりと言い放ったカゲミツに、目を丸くしてしまった。
カナエは邪魔してごめんね、と立ち上がる。
向こうの方からキヨタカの見せ付けてくれるな、なんて冷やかしが聞こえる。
カゲミツを上からどかし、座敷に座り直す。
これは本格的に酔っ払っている。
もう家に連れて帰った方がいいのかもしれない、でもこんな素直で可愛いカゲミツはそう滅多に見れるものではない。
ぐるぐると葛藤を繰り広げて、ひとつの結論に辿りついた。

「カゲミツ」
「んー?」
「チュー、しよっか?」

ここで拒否されたら大人しく家に帰ろう。
そう考えて綺麗な琥珀色の瞳をじっと見つめる。
しばらく思案したようなカゲミツだったけど、おもむろに腕を伸ばして首に回した。
目を閉じてゆっくりと近付いてきた唇が自分のもの重なった。
すぐに離れてしまった唇をすぐに追い掛けて、閉じたままのそれをぺろりと舐める。
びくりとして薄く開かれた口が妙に色っぽくて胸がどきんと高鳴る。
もう一度軽く口付けると、今度は自分から重ねようとしてきたカゲミツにニヤリと笑って口を耳に寄せた。

「もっとしたい?」

意地悪く問えば恥ずかしそうにコクンと頷いた。
伏せられた、揺れる睫、どれもがアルコールよりも強く理性を鈍らせる。

「じゃあ好きって言って?」

調子に乗ってそう囁いても怒らない。
耳打ちする口を手で隠して、小さな声で好きだというカゲミツに聞こえないと言ってやる。
困った顔がまた可愛らしい。

「ほら、みんなに聞こえるように言って」

この際だからと無茶を言ってみたら、カゲミツがすっと身体を離した。
さすがにやり過ぎたかと見守っていると、耳まで赤くしながら大きく息を吸い込んだ。

「俺は、オミが好きだ」

それは仲間達にもしっかりと聞こえるほどの声で、驚いた視線が一斉にこちらに注がれる。

「これで、いいか?」
「うん、俺も大好きだよ」

伺うように見上げてきたカゲミツに、ニッコリと満足げに微笑む。
顎を掬ってお望み通りのキスをしようとしたら、おしぼりが投げつけられた。
いいところなのにと飛んできた方向を睨むと、心底鬱陶しそうな顔をしたヒカルがおしぼりを構えていた。

「調子乗り過ぎ。それ以上は帰ってからにしろ」

確かにこれ以上可愛いカゲミツを仲間達に見せたくもない。
俺達の仲はもう十分に見せ付けられたはずだ。
足取りも覚束ないカゲミツの腰を抱き、財布から一枚お札を取り出した。

「じゃあ俺達はそろそろ帰るとするよ」

素直に寄り掛かってくるカゲミツに気分を良くし、見せ付けるように頬に口付ける。

「ではみんな、楽しい夜を」

そう告げて仲間達がまだ残る座敷を後にした。


*

後日、記憶をすっかりなくしていたカゲミツが自分の失態とオミの暴走を聞き、しばらくまともに口を利いてもらえない状況が続いた。
しかしあの日のカゲミツの可愛いさを考えると、しばらく口を利いてもらえないことを差し引いても有り余るくらいだ。
ニヤニヤとした笑みを浮かべながらカゲミツの背後に近付く。

「カゲミツ、好きだよ」
「うるせー、バカ!変態!近寄んな!」

素直なカゲミツも可愛いけれど、嫌そうな顔でぎゃあぎゃあと騒ぐ方がカゲミツらしい。
一人そう考えて笑みを深めると、気持ちわりーというカゲミツの絶叫が部屋中に響いた。

*

うち(のサイト)のカゲミツがこんなに素直で可愛いわけはありません←
しかし酔っ払ってオミさんに甘えまくるカゲミツは一度やってみたかったので楽しかったです
そして丁度よかったので診断メーカーお題もいれてみました

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