▽10/30 01:03

元主のオミ様は容姿端麗、頭脳明晰と言われている、はずだったのだけど・・・。
目の前で恋人であるカゲミツにじゃれつく姿はかつての面影を微塵も残していないように思う。

「カゲミツー、今日の晩御飯は何がいい?」
「なんでもいい」
「じゃあカゲミツが食べた」

言い終わる前にパシンと殴られたオミ様はムスッとした顔でカゲミツを見た。
もーと膨れるなんて、昔は見せなかった表情だ。
そして仕事中、それも周りが仲間にいる状況で堂々とそんなことを言ってしまうことにも驚いた。
ただでさえ照れ屋の恋人にこの状況で言っても聞き入れられないことなんて考えるまでもないことだ。
カゲミツったら恥ずかしがり屋なんだからと聞こえた声は、聞かなかったことにしておこう。

それからしばらく経ったある日のことだった。
カゲミツは相変わらず黙々とパソコンに向かい、オミ様は隣で俺と喋りながら作業をしている。
話しながらなのに、キーボードを叩く手が止まらないのはさすがオミ様だ。

「カゲミツは栄養が足りてないと思うんだ」
「ええ」
「だから俺が作ってあげようと思うんだけど、何がいいと思う?」

恋人の体調を気にして、手料理を振る舞おうなんて健気なお方だ。
うーんと考えてから、料理の腕を思い出す。

「作りに伺いましょうか?」
「俺が作らないと意味がないだろ?」

それにもう敬語じゃなくていいんだからというオミ様に曖昧に頷く。
生まれてからずっとそうだったものを突然変えるというのはなかなか難しいものだ。
いい?と念を押してきたのでコクリと頷いた。
それを見て満足げに笑うオミ様に心が温かくなる。
やっぱりこの方だと信じてついてきたの間違いではなかったのだ。
そんなオミ様の為に栄養がついて簡単な料理を考えよう。
あれやこれやと思考を巡らせていると、小さな声が耳に入った。

「でも骨張ってるのはそれでセクシーなんだよね」
「・・・はい?」
「最近のカゲミツ、セクシーだと思わない?」

突然の仰天発言に目をぱちぱちと瞬かせる。
セクシー?正直な話、ガリガリにしか見えないけれどそんなことを言える訳もなくあんぐりと口を開く。

「首から肩にかけて見えてるラインとかさ、服で隠れてるけど腰のラインとか」

服で隠れた部分なんて知らないに決まっているでしょう!
というか仕事中に何を考えているんだ、元主は。
さっきまで忙しく動いていたはずの手は完全に止まってしまっている。

「女の子とはまた違うんだけどね、あぁセーラー服とか着て欲しいな」

カタカタとキーボードが鳴ったかと思えば、モニターにどんとコスプレ用の服が映っている。
ナースもいいなー、なんて楽しそうにしているオミ様に何と声を掛けるべきなのかがわからない。
なぜこんな話になったのか、話の元を辿ってようやく答えが見つかった。

「オミ様、手料理の話なのですが」
「あぁ、やっぱり毎日はキツイのかな」
「毎日手料理はなかなか大変かと」
「じゃなくて夜の話」

しれっと言ったオミ様に、危うくすんなり流しそうになってしまった。
何を言っているんだ、この人は。
驚愕した顔に気付きもせずにせめて一日置きの方がいいのかなぁ、なんて呟いている。
さっきまでの考えがガラガラと音を立てて崩れていく。
テロを企てたときだって、こんな風に思ったことはなかったのに。

「ねぇ、ヒサヤはどう思う?」

ことんと首を傾げて尋ねてきたオミに、一拍の間を置いて絶叫が響いた。

「そんなこと俺が知るかー!!!」

その瞬間、本当の意味で主従の関係が終わった、ように思う。
恋は盲目とはよく言ったものだ、本当に。

*

オミさんがアホの子なのはうちのサイトではデフォです←
オミさんはカゲミツとのあれこれをヒサヤに日々話してたらいいなと思います
ヒサヤは真面目な顔でふむふむと頷いていて欲しいのですが、今回は全力でキャラ崩壊させてしまいました
わたしは楽しかったです、とても

俺の〜がこんなに〜なわけがないシリーズが続く、かも?しれません

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