▽10/25 22:52

パソコンに向かっているカゲミツの姿を横から眺める。
二人で暮らすようになってもう随分と時が経ったけれど、いつまで経っても見飽きることはない。
カタカタとキーボードを鳴らす指は白くて長細い。
痩せているせいで少し骨張っているけれど、綺麗な指だといつも思う。
あー、という苦悶の声と共にその指がガシガシと乱暴に頭をかいた。
視線を指からキラキラと輝く金髪へと移す。
短く切り揃えられた髪に何とも言えない気分になってしまう。
自分が知っていたカゲミツは長髪だった。
しかし大人になり再会を果たした時には、見る影もなく短くなってしまっていたのだ。
短い髪もよく似合っている。
本来の美しさは失われてはいない。
しかし時々昔を思い出してはあのまま成長していればなと思わずにはいられないのだ。
腰掛けていたソファーから立ち上がり背後に回っても、カゲミツは気にする様子はない。
後ろから首に腕を回し、短い髪を指でくるくると遊ぶ。

「なんで切っちゃったの」
「は?最近切ってねぇだろ」

面倒臭いのか回された腕を気にすることなくカゲミツが答える。
最初は嫌がられたこの行為にも慣れるくらい時間が経ったのかと思うと、幸せな気持ちが沸き上がってくる。
そう思っても顔には出さず、はぁと息を吐いてカゲミツの襟足をなぞる。

「そうじゃなくて・・・」

晒されっぱなしの白い首筋にひとつキスを落とす。
最近切っていないと言われても短い。
はぁと溜め息をこぼすとカゲミツが何のことだか理解したらしい。

「そんな昔の話・・・」
「俺はいつ切ったかなんて知らない」
「いろいろ面倒くせーんだよ」

すねた声で言うと呆れた声が返ってきた。
確かにそうなんだけど、けれど。
むすっとした顔でカゲミツの顔を覗き込むと、パチンとデコピンをされてしまった。
地味に痛む額を摩りながらジト目でカゲミツを睨む。

「こっちの方が楽なんだよ」
「一回だけでいいから」
「嫌だ、それに・・・」

そう言ってカゲミツが目を伏せた。
どうしたのかと顔を覗き込むと、妙に恥ずかしそうにしている。

「それに、何?」

意味がわからず優しく問い掛けると、白い頬がうっすらと赤く染まった。
照れているのだ、珍しく。
でも何に?わからずに首を傾げると、カゲミツが口を開いた。

「髪伸ばしたら、お前が」
「俺が?」
「さっきみたいなこと、しなくなるだろ」

この距離じゃないと聞こえないほど小さな声で呟いて、カゲミツはプイッとそっぽを向いてしまった。
本気で恥ずかしかったのか、白い首筋までもが赤く染まっている。
さっきみたいなことと考えて、何のことだかわかりニヤリと笑う。

「それもそうだね」

回した腕に力を込めて、お望み通りもう一度その首筋にキスを落とした。

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