▽08/09 11:35
休日の朝の早い時間。
二人してベッドの中でぐっすりと眠っているとき、カゲミツの携帯が震えた。
まだ覚めない頭で携帯の通話ボタンを押す。
「・・・もしもし」
「悪い、もしかしてまだ寝てたか?」
電話から聞こえてきた声は、かつて恋して止まなかった人の声で。
まるで条件反射のようにカゲミツの頭が覚醒した。
「いや、大丈夫だ・・・何か用か?」
問い掛けながら壁にある時計を確認する。
まだ8時にもなっていない。
緊急のことかと身構えたカゲミツにタマキは申し訳なさそうな声を出した。
「今日、俺の代わりに手伝って欲しいんだ」
タマキから内容を聞き、二つ返事で了承してから隣にいるオミの肩を揺する。
「起きろ、出掛けるぞ」
「ん〜・・・まだ8時じゃん」
寝よ?と引っ張る腕を無理矢理引きはがす。
オミから離れカーテンを勢いよくあけた。
差し込む陽射しが眩しい。
「眩しいなぁ」
ブツブツと文句を言いながらオミも体を起こした。
「ねぇ、出掛けるってデート?」
そう聞いてくるオミにタマキの電話の内容を伝えると、想像通り不機嫌になった。
「どうしてタマキの為に働かなきゃいけないの?」
「困ってるんだから助けてやるべきだろ」
「まったくカゲミツは・・・俺も行かなきゃダメなの?」
「誰か誘うならお前しかいないだろ」
行きたくないなら他を当たる。
カゲミツが冷たく言い放てばオミはしぶしぶ頷いた。
急いで朝食を取り、タマキに言われた遊園地を目指す。
着ぐるみの中に入る、なんてもちろんしたことのない二人は、軽く考え過ぎていた。
手伝いを始めて数時間後、ようやく休憩の時間がやってきた。
着ている服は汗でぼとぼと、暑いし、視界は悪いしと散々だ。
「大丈夫か、オミ?」
「俺のことより自分の心配しなよ」
自分よりも貧弱なくせに他人のことを心配している余裕があるのか。
オミがカゲミツの顔を覗き込むと小さくごめんと謝られた。
「いいよ、その代わり付き合ったお礼はたっぷりしてもらうからね」
「あぁ、わかった」
後日思い出したくもない形でたっぷりとお礼する羽目になり、簡単に返事をしてしまった自分に後悔するカゲミツだった。
*
オミさんにお礼はたっぷりもらうって言わせたかっただけなんです←
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