▽07/06 22:33

「二度と顔見たくねぇって思ってたのに」
「つれないね、俺は会いたかったのに」

よく言うよ、俺から逃げて、タマキまで奪ったくせに。


カナエが生きていた。
その事実を自分の中でどう整理すればいいか分からない。
もう会うこともないだろうし、会いたいとも願わなかった。
なのにまたしても、カナエは俺達の前に現れたのだ。

「生きててくれてよかった」

カナエはそう言って、自分でつけた傷痕を愛しそうに撫でる。

俺はこの傷のせいで半年間も眠っていたというのに。
抵抗しようと腕を上げたところで、固い金属が背中にぴたりと当てられた。
1年半前に、俺を意識不明の状態に陥れたソレだ。

「抵抗しないでね」

声色は優しいままなのに、言ってることが恐ろしい。
チッと舌打ちして腕を下げると、上からいい子だねという声が聞こえた。

「何の真似だ」
「何が?」

殺すなら、さっさと一思いに殺して欲しい。
誰もいない夜の公園に二人きり。
逃げる前のカナエを思い出して、胸が苦しくなる。
好きだよと優しい温もりに満ちた声が勝手に再生されてしまう。
せっかく立ち直りかけたのに、また挫けてしまいそうだ。
いっそ殺しくれれば、こんな気持ちを忘れてしまえるのに。

「殺すならさっさと殺せよ」
「それは出来ないよ。だって俺は、」

それ以上は言わないでくれ。

「カゲミツ君が好きだから」

少しの間を置いて紡がれた言葉は、ずっと聞きたくて、でも一番聞きたくなかった言葉だ。
全てはスパイの為の行為だったと自分を納得させていたのに。
視界が歪む。本当に納得してたのかと問い掛ける自分自身を消し去ってしまいたい。
せめてカナエに悟られないようにと唇を噛み締める。

「噛むならこっちにしない?」

声と同時に重ねられた唇を、思いっきり噛んでやった。

(相変わらず感情を出すのが下手だね、カゲミツ君は)

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