▽08/17 13:21

「カゲミツのどこが好きな訳?」

珍しく二人っきりで作業をしていたワゴン車。
ずっと続いていた静寂を破ったのはヒカルの唐突な質問からだった。
お互いパソコンから目を離さないまま会話をする。

「何、いきなり」
「単純な疑問、かな?」
「あ、そう」

それっきり黙ってしまったオミにヒカルは顔をしかめる。

「言えないのか?」
「君に言う必要は感じないね」
「カゲミツが気にしてても、か」

声色が変わったヒカルの言葉にキーボードを叩くオミの手が止まった。
ちらりと目をヒカルの方に向ける。

「カゲミツが言ってたんだよ、オミが俺のどこが好きだかわかんねぇって」
「そう」
「本人には聞けねぇって悩んでたから、こうやって俺が聞いてる訳」

オミはキーボードに置いたままだって手を胸の前で組んだ。
難しい顔をして一点を見つめている。
ヒカルもパソコンから目を離して体ごとオミの方に向ける。

「カゲミツはしばらく帰ってこねぇんだしさ、たまには腹割って話そうぜ、な?」
「・・・わかった」

ゆっくりと顔を上げたオミにヒカルが微笑む。
仕事は一度休憩、買ってあった缶コーヒーを手渡して二人は話し始めた。

「で、最初に戻るけどカゲミツのどこが好きなんだ?」
「綺麗だろ」
「は?」
「髪も肌も目も全部」

真顔で言ってのけたオミにヒカルは驚きを隠すことが出来ない。
確かに日本人離れした容姿は黙っていれば綺麗だ。
しかしあの口の悪さと性格を知っていれば、そうきっぱりとはなかなか言い切れないと思っていた。
それに普段飄々としているオミがこんなにも真面目に答えるのも予想外だった。

「お前はカゲミツの見た目が好きなのか?」
「まさか」
「じゃあ他にどんなところが好きなんだよ」

真剣に考えるオミにヒカルは内心面食らっていた。
カゲミツが気にしていた、なんて嘘だ。
実際はただの興味本意。
言う必要がないと言われれば聞き出したくなるのが人間ってヤツで、カゲミツの名前を出したら少しは答えてくれるかと思ったら実際はそれ以上で。
見えづらいけどカゲミツって案外大事にされてんだなぁと思ったりしているとオミが口を開いた。

「カゲミツって口は全然素直じゃないだろ」
「そうだな」
「でもキスするとき、口では嫌だって言いながら肩を掴んでくるんだ」

控え目に笑ったオミが幸せそうで、コイツこんな風に笑えたんだとヒカルはぼんやりと思う。
それもつかの間、そこからオミの怒涛の惚気話が始まり、面白半分で聞いてしまったことを後悔するヒカルだった。


*

今日は他の部隊にヘルプで行っていたカゲミツ。
ただいまーと声を掛けて入るなりオミに力いっぱい抱きしめられた。

「いきなり何だ」
「好きだよ、カゲミツ」
「は?」

その後、食事をしていてもテレビを見ていても、寝るときまでもいつも以上にベタベタしてくる理由をカゲミツが知るのはそれから数日後の話。

*

ヒカルはイタズラっ子じゃないかなと思っています
オミさんは人前で飄々としているけどカゲミツ大好き!なはず←

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