▽08/20 00:51
タマキが頼みたいことがあると電話が掛かってきたのは今から一時間半前。
カゲミツとカナエはとある遊園地に来ていた。
タマキの頼み事というのは遊園地で着ぐるみを着て風船を配ること。
二つ返事で了承したカゲミツは今、自分達が着る着ぐるみを目の前にしていた。
「着ぐるみって大きいんだね」
「そりゃそうだろ、大人の男が入るんだから」
カゲミツはそう返しながらも目をパチパチと瞬かせていた。
二人とも着ぐるみというものは何か知っていた。
しかし幼い頃、遊園地に来る機会がなかった二人は着ぐるみというものをちゃんと見たことがなかったのだ。
想像以上に重量感のあるソレを二人で眺める。
「とりあえず、やるしかないね」
カナエの一言に頷いて、カゲミツも着ぐるみに手を伸ばした。
想像を絶する辛さ。
着ぐるみの中を一言で表現するとそれだ。
これを着て炎天下で踊ったりする人がいるのかと思うと、夢を売るのも楽じゃないななんてカゲミツは思う。
休憩を挟みながら約束の時間まで風船を配り続け、終わる頃には二人ともくたくたになってしまっていた。
頭部を外して壁にもたれ掛かる。
頭から水をかぶったみたいに汗をびっしょりかいている。
「代謝悪いカゲミツ君がそんなに汗かくなんてね」
「相当な重労働だぞ、これ」
お礼にともらったペットボトルを一気に飲み干す。
疲れているけれど、かといってここに長居する訳にもいかない。
よいしょと重い体で立ち上がり着ぐるみを脱ぐと、カナエがニコリと笑った。
この笑い方をするカナエにいい思い出がない。
引き攣った顔でカゲミツが尋ねる。
「何笑ってんだよ」
「汗で透けたTシャツがセクシーだなと思って」
カナエの言葉に視線を自分の体へと落とす。
汗でびしゃびしゃになったシャツはうっすらと肌色が透けて見えている。
慌ててカナエを見るとニッコリと微笑んでいる。
まるで人畜無害と見せ掛けて、その中身は限りなく有害だ。
身をもって知っているカゲミツの背中にさっきとは違う汗がすーっと流れる。
本能が逃げろと警告を鳴らしている。
だるい体に鞭を打ち、立ち上がろうとしたけれど一瞬カナエの方が早かった。
瞬発力でカナエに勝てる訳なんてないのだ。
シャツの上を滑る手つきがいやらしい。
いよいよ服の中にカナエが侵入しそうになったとき、ガチャリと音を立ててドアが開いた。
「どうしたんですか?」
「ちょっとクラッとしたみたいで・・・、もう大丈夫なんですぐ帰ります」
ドアに背を向けていてよかった。
カナエがいつものように人の良い笑顔で突然の訪問者に対応する。
お気をつけてと出て行ったのを見てから、カナエを引きはがした。
「危なかったね」
「お前が変なこと考えるからだろ!」
急いで着替えようとするカゲミツにカナエがシャツを手渡した。
「なんだよ」
「これ着たら見えないでしょ?」
カナエの言いたいことが分からず首を傾げる。
「我慢出来そうにないんだ」
ごめんねと小さく告げられ、服を上から羽織らされた。
そのまま腕をひかれ、近くのホテルまで来てようやくカナエの言葉を理解出来たのだった。
*
ほんとはえろくしようかと思ってたんですが力尽きました
ちなみに着ぐるみシリーズで書きたかったことは汗で白Tシャツが透けちゃうカゲミツでした
お付き合い頂きありがとうございました
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