▽07/05 22:00

かつてトキオとタマキが二人で住んでいた部屋は、今はカナエとタマキの部屋へと変わっていた。
その隣で、カゲミツはヒカルと新たに諜報班に加わったオミと三人暮らしをしている。
とは言ってもヒカルはほとんどキヨタカの家で過ごしているけれど。
時々帰ってくるヒカルの顔を見ては、幸せそうだなとカゲミツは思う。
キヨタカのやつがさ、という言葉で始まるのは愚痴と見せかけた惚気だ。
届きそうな距離で届かない想いを抱えるカゲミツは、いつも曖昧な表情でその話を聞いていた。

ある晩、カゲミツはオミと二人で飲んでいた。
翌日は休みだ。ヒカルが帰ってくるはずもない。
強くもないのにきつめのアルコールをロックで煽って。
グラスを強く握り締めたまま机に突っ伏すカゲミツの背中をオミが優しくさする。
大丈夫かと訊ねてもカゲミツからの返事はない。
ゆらりと起き上がり、グラスに残った最後の一杯を飲み干した。
今日はまた随分と荒れてるな、オミが心の中でため息をつく。
カゲミツは乱暴な手つきで酒の入った瓶のフタを開けている。
ここまで乱暴な飲み方をしている理由は大方検討がついていた。
多分、任務を終えたミーティングルームのあの出来事のせいだろう。

今日の任務はシンジュクを拠点に活動しているテロリストの制圧だった。
そこそこ名前の知れたグループだったため、想像ほど簡単に任務は終わらなかった。
死人が出たとか大きな怪我をした訳ではなかったが、カナエの腕を銃弾が掠ったらしい。
いつもの笑顔で大丈夫だというカナエと、手当てすると言って聞かないタマキ。
何も知らない人から見れば仲間想いのいい奴かもしれない。
しかし二人の関係を知っている者から言えば、いわば痴話喧嘩だ。
掠り傷程度だから大丈夫だよ、でも俺は心配なんだ!
カゲミツに告白されているのに、目の前でよくそんなやり取りをするなとオミは心の中で悪態をつく。
(フラれていることは明確けど、カゲミツはまだ正式な返事を待ち続けている)
ミーティングルームではタマキに加勢しカナエに詰め寄っていたけれど、やっぱり辛かったんじゃないか。
そういう一途過ぎるところに、時々オミは寂しさを覚える。

いよいよ目がとろりとしてきたカゲミツからもう中身の殆どない瓶を取り上げる。
酔っ払って虚ろな目が億劫そうにオミの顔を見上げる。なんで、と言いたげな瞳で。

「これ以上飲んだら毒だよ」

俺にとっても、と心の中でオミは付け加える。
アルコールのせいで揺れる琥珀色に、どれだけ心を乱されているかなんてカゲミツは知る由もない。
残ったアルコールを自分のグラスに注ぎ、一気に飲み干した。
酒に弱くはないが、さすがに頭がくらりとする。
むっとした表情で睨みつけてくるその瞳になんだか無性にそそられた。
必死に保っていた理性が切れる音が聞こえた。

「カゲミツ、辛いんだね」

顎をクイと持ち上げて、カゲミツの顔を固定する。
酔っ払ってるせいか、抵抗も否定の言葉も出さずにオミの顔を見つめている。

「慰めてあげる」

俺もその気持ちが分かるから、そう言って目尻にひとつキスを落とす。
嫌がられるかと思ったその行動は想像に反して素直に受け入れられた。


「・・・最後まで責任持って慰めてくれるのか?」

口を開いたカゲミツから出た言葉は予想外のもので思わずオミが息を呑む。
答えの代わりに薄く開いたカゲミツの唇に誘われるように口付けた。

by確かに恋だった

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