▽06/19 00:48
「冷たっ・・・」
手の平に一滴の冷たい感触。
驚いて空を見上げたと同時に、一斉に雨粒が落ちてきた。
「雨だ、走るよ!」
おつかいの途中だったけど生憎傘は持って来ていない。
カナエはカゲミツの手を掴んで全力で走り始めた。
腕を引かれるまま走り、普段運動をしていないカゲミツのスピードが落ちはじめたときある建物の中に入った。
「どこだよ」
壁に手をついてカゲミツが苦しそうに息をしながら尋ねる。
カナエは背中をさすりながら平然と答えた。
「俺のマンション。ここが一番近いからね」
確かにバンプアップまで戻っていると、今も雨に濡れているところだ。
どうせ通り雨だろうし、止むまではカナエの家に上がらせてもらおう。
キヨタカも少しの雨宿りくらいは許してくれるだろう。
「じゃあ上がらせてもらうぞ」
「もちろんだよ、さぁ早く」
まだ苦しそうな背中をさすりながら先を促す。
急いで鍵を開けて、部屋に入った。
くしゅんと大きくくしゃみをしたカゲミツにタオルを手渡す。
いつも着ているツナギは雨に濡れて色が変わってしまっている。
冷てぇーと叫びながら髪を拭いているカゲミツを置いて、カナエはバスルームに向かった。
「そのままだと風邪ひいちゃうから、こっち来て」
一通り水分を落としたカゲミツが呼ばれるがままに覗き込む。
「とりあえずシャワー浴びなよ」
新しいタオルを手渡されそのまま脱衣所に押し込められた。
言われるがままに服を脱ぎ、バスルームに入った。
冷えた体に温かいシャワーが気持ちいい。
ドアの向こうでカナエが何か言った気がしたが、シャワーの音に掻き消されてしまった。
「これはどういうことだよ」
バスルームを出たカゲミツを迎えたのは、いつものツナギではなく白いシャツだった。
置いたはずの場所を見てもそのシャツしか見当たらない。
とりあえず羽織り、部屋に入りソファーで髪を拭いているカナエを見て出た一言だった。
「ツナギは雨に濡れちゃったから洗濯したよ」
「なっ・・・、なんで一言言わねぇんだよ」
「声を掛けたけどカゲミツ君が答えてくれないから」
だから洗濯しちゃったとカナエは言ってのける。
とりあえずツナギのことはもういいとしよう。
問題はこの服装だ。
「カナエ、」
「カゲミツ君の生足、そそるね」
口を開いて突っ込もうとした瞬間言葉を重ねられてしまった。
内容に一瞬呆気に取られてしまう。
今のカゲミツの服装は白いシャツだけを羽織っている状態だ。
身長が同じカナエのものなはずなのに、少しぶかっとしているのが悲しい。
「下も探したんだけど、なくって」
眉毛を下げてすまなさそうにカナエが言う。
ムスッとしていても、過ぎてしまったことは仕方ない。
手招きされるがままにカナエの隣に腰を下ろす。
「そういえば、まだ隊長に連絡してなかったね」
懐から携帯を取り出し、通話ボタンを押した。
『カナエか、雨は大丈夫か?』
「はい、俺の家が近かったんで雨宿りしています」
『そうか、なら雨が止んだら戻って来い』
「そうしたいんですが、これ、急ぎのものじゃないですよね?」
『まぁそうだが、どうかしたか?』
「雨に濡れたせいか、カゲミツ君の顔が真っ赤なんです」
しれっと嘘をついたカナエにカゲミツが口を開きかけたけど、人差し指をぴたりとつきつけられた。
「出来ればこのまま家でゆっくり休んでもらいたいんですが・・・」
駄目ですか?とカナエは心配そうな声で続けた。
目はカゲミツに向かってイタズラっぽく笑っている。
『そうか、アイツは病弱だからな。よろしく頼む』
頼んだものは明日でいいと言ったキヨタカにカナエが礼を告げて通話は終わった。
「カナエ、どういうことだ・・・!」
携帯をポケットにしまったのを確認して、カゲミツが低い声で尋ねる。
カナエはニコリと笑って気にする様子もないのだけど。
「カゲミツ君、今顔赤いよ?」
ほらと鏡を指差される。
それは熱のせいではなく、風呂上がりのほてりと怒りのせいだ。
キッと睨みつけたら、カナエの長い指がカゲミツの晒されっぱなしの白い太股に触れた。
「嘘はついてないでしょ?」
確かに嘘はついていない。
いないけれど。
「隊長にもよろしく頼むって言われたし、しっかり看病してあげる」
シャツを精一杯伸ばして足を隠そうとするカゲミツの手に自分の手を重ねて、ゆったりとその身体を横たえた。
翌朝、辛そうなカゲミツがカナエに支えられながら来た本当の理由はみんなにはもちろん秘密だ。
*
身長同じくらいなのに体格差のせいでぶかっとなったら萌えるなぁと思って書き始めたんです、よ
前のも然りですが、あんまりリベンジにならなかったっていう←
カゲミツ受で統一って見て、カナカゲ書きますとこっそり宣言したのでとりあえずmainに持っていくべきか、それとも皆様わりとここの存在を知って下さってるようなので持っていかないでおこうか迷っているところです
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