▽06/05 19:16

もしものためにと思いトキオを最後にしておいて正解だった。
いや、寧ろもしものためなんて想像をしたのがいけなかったのか?

教え子であるトキオとは生徒と教師、それ以上の関係があった。
放課後は自分のいる化学準備室に入り浸り、休みの日には勉強と称して度々家にやってくる。
そこではこっそりと唇を重ねたり、時にはそれ以上のことまで。
二人は決して他人に知られてはいけない恋人同士なのだ。
普段は気を使って完全に二人きりのときにしか仕掛けてこないトキオだけど、人もまばらな放課後の教室で二人きりということで気が緩んでいたのかもしれない。

「お前は将来何になりたいんだ?」
「先生のお嫁さん」

語尾にハートがつきそうなくらい笑顔で言われても溜息しか出てこない。
同性にも異性にも人気のあるトキオがなぜ自分を選んだのか。
カゲミツはいつまで経っても不思議で仕方なかった。

「冗談はいいからそろそろ大学とか決めないとまずいだろ」
「本気なんだけどなぁ」

机に頬杖をついて、見上げるようにして言うトキオにもう一度溜息を吐き出した。

「トキオ」
「だって先生食生活最悪だし家事だって全然ダメじゃん」

その通りなので返す言葉もないが、今はそういう話をしているのではない。

「それは改善するように努力する、で、お前の学力だと」

ペラペラと大学の情報の載ったパンフレットをめくる。
飛び抜けていい訳ではないが、トップクラスの成績を保っていた。
高望みさえしなければどこに行くにもそんなに苦労はしなくてもいいだろう。
ペラリ、ページをめくろうとした手をトキオが掴んで止めた。

「俺、本気なんだけど」
「え?」
「先生のお嫁さんになるの」

あまりにも真剣に言われて少しどきりとした。
しかしそんなこと良いわけないという理性が働く。

「お前はまだ若い、もっといろんな世界を見るべきだ」
「先生はさ、俺と一緒に生活したくない?」

寂しげにコバルトブルーの瞳が揺れる。
掴まれた手は今は縋っているようにも見える。
うやむやに答えてはいけないと感じた。
黙って言葉を探していると、トキオが口を開いた。

「俺はずっと先生といれるし、先生は家事をしなくてもいい。いい話だと思うんだけど」

そう言って徐に首に手を伸ばし、シュルリとネクタイを外された。

「それに思う存分愛し合える」

はっきりと言われた言葉に顔が赤く染まった。
相手は子供だ、そう思っても速くなる鼓動を抑えることが出来ない。
俯いて真っ直ぐな視線から逃げると、今度はシャツのボタンを外し始めた。

「ト、キオ・・・」
「火、ついちゃった?」

こんなときだけ子供っぽく笑ってトキオの手がシャツを割って入ってきた。
冷たい指先がまだ柔らかいそれに触れる。

「っっ!」

体が大きく揺れ、ガタンと音を立てて机も動いた。

「俺は毎日でも先生とこういうこと、したいよ」

甘い声で囁くトキオに反抗しなければと頭では分かっているのに体が動かない。
トキオの手は止まることなく指の腹で撫でたり弾いたりと刺激を与えてくる。
気を抜けば変な声が出そうで唇を噛み締めた。

「そんな顔されると、止まんなくなっちゃうよ」

トキオは乱暴に二人の間にあった机をどけて距離を詰めた。
最初ボタンが開けられただけだったシャツは肩のあたりまで脱げかけている。
愛撫によって固くなった胸の突起にトキオが唇を寄せる。
ペロリと舐められて思わず声が漏れて、我に返った。
いつ誰に見られるかもわからない状況で何をやっているんだ。
吸い付いてくるトキオの頭を弱い力で押すと顔が離れた。

「が、学校ではしない約束だろ」
「先生が誘うような顔で見るからじゃん」
「は?!」

そんなことないと真っ赤な顔で言っても説得力はない。
とりあえず服装を整えていると下校のチャイムが鳴った。

「結局何も話せなかったな」
「ねぇ、じゃあ今から先生の家に行ってもいい?」

今日は金曜で明日は休みだ。
断る理由なんてない。
しかしすぐに了承するのも癪でどうしようかと悩む素振りを見せる。

「先生の家でさっきの続きをしよう」

ニッコリと笑ったトキオに、それは面談の続きなのかイタズラの続きなのかと疑問に思ったけれど口には出さずに頷いた。

*

反省点は胸を攻めきれなかったことですね←

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