▽05/10 19:15

「あ、忘れものしちゃった」

仕事後、部屋でゆっくりと寛いでいるとカナエが声を上げた。
その言葉をふうんと聞き流して、読んでいるパソコン雑誌に意識を戻した。
時刻は夜の9時だ。
今まで忘れたことに気付かなかったんだから大したものではないだろう。
そう考えてページをめくる。
しかし次の瞬間、手首をぎゅっと引っ張られた。
俯せで頬杖をして見ていたからガクンと顎がぶつかってしまった。

「取りに行きたいんだけど、ついてきてくれるよね?」

ニッコリと笑うカナエに妙な違和感を覚える。
握られたままの手首を解放する気配はなさそうだ。

「わかったよ・・・」

妙に思いながらも返事をするとカナエは満足げに頷き立ち上がった。
その間もずっと手首は掴んだままで。
エスカレーターに乗るだけだから五分もかからない距離なのにという疑問は、ミーティングルームに入った瞬間解けた。
先に足を踏み入れたカゲミツをカナエが後ろから抱きすくめる。

「何してんだよ」
「カゲミツ君を感じてるんだよ」

隙間なんてないくらいに身体を密着させ、耳元でそっと囁く。
耳に息がかかってくすぐったい。
首筋に音を立てて落ちる唇に身をよじった。

「忘れ物はっ・・・?」
「あぁ、勘違いだったみたい」

しれっと答えたカナエに、してやられたのだとようやく気付いた。
その間もカナエの手は止まらずに身体中を優しく滑っていく。
少し開いてるツナギの隙間から手を侵入させてシャツの上から胸元に触れたとき、肩がびくりと揺れた。

「感じやすいんだね、カゲミツ君は」

ふふっと楽しそうに笑ったカナエに悪態をつきたくなるがとりあえず我慢。
今はこの状況をどうにかするのが先だ。
"目的"を持って連れて来られたみたいだから、どうにかするのはなかなか難しい問題に思えるけれど。

「カ、ナエッ・・・」
「どうしたの?」
「家で、したい」

これはカゲミツなりの精一杯だった。
こうことは自分から積極的に言わない。
それどころかとりあえずは拒絶するのが常だ。
だからこの一言でカナエの気が変わってくれたらと、一抹の願いを込めた。

「カゲミツ君からそんなこと言ってくれるなんて、意外だね」

上手くいった、のか?
しかし指を這わすカナエの手は止まる気配はない。

「そんなにシたいなら、家に帰る時間が勿体ないね」

今日二度目のニッコリとした笑顔にカゲミツは自分が負けたのだと理解した。
そもそもカナエに勝てた試しなど今まで一度もないのだ。
今まで優しく、何なら少し物足りないくらいだった愛撫が急に激しくなった。
ツナギを肩まで下ろされて片手はシャツの中へ、もう片方は太股のあたりをさわさわとさすっている。
変な声が出そうになって、咄嗟に息を飲み込んだ。

「こえ、我慢しないで」
「誰か来たらどうすっ、」

もう夜の9時だと言っても、いつ誰がやってくるか分からない。
抗議しようとしたら、キュッと胸を摘まれて阻まれてしまった。
弾かれこねられひっかかれ、カナエの指が楽しそうに胸を刺激する。

「もう、やっ」
「嫌なこと、ないよね?」

いつの間にか壁につかされていた手に力を込めて快感をやり過ごす。
しかし下半身に集まり始めた熱はどうすることも出来ない。
嫌だと首を振ると、そこをがぶりと甘噛みされてソレをぎゅっと握られてしまった。

「あぁっ・・・!」
「そうそう、いい声だよ」

ゆっくりゆっくりとカナエの手がカゲミツのモノをさする。
カゲミツは唇を噛んで必死に快感に耐えている。
その顔がカナエの興奮を煽っているとも知らずに。

「カゲミツ君もいつもより興奮してるよね?」

カナエの手を濡らすものがいつもよりも多い。
耳元で囁いてやると、カゲミツが甘い声を上げた。
快感に身を震わせているのを見て、カナエは手のスピードを早めた。

「アッ、」

小さく呻いて熱を吐き出し、膝から崩れ落ちそうになったカゲミツを後ろから支える。
荒い呼吸を繰り返し、赤い顔に滴る汗が劣情を煽る。
カゲミツのツナギを繋がれるところまで脱がし、秘部に手を這わせた。

「今日のカゲミツ君、凄くイイよ」

囁いてカゲミツの耳に舌を這わせる。
自分を受け入れやすいようにと解しながら、愛撫するのも止めない。
早急に慣らして衣服を簡単に寛げた。
いつも以上に興奮しているのはカナエだって同じだ。
耳元で聞こえるカナエの荒い息に、カゲミツも興奮を煽られていた。

「いれるよ」

切羽詰まった声にコクコクと頷くと、質量を持ったソレがカゲミツの中に入ってきた。
最初から激しい動きに、場所も忘れてカゲミツが嬌声をあげる。

「あっ、カナ、エッ」
「カゲミツ・・・いいよ」

普段はしないくせに、呼び捨てにされてカナエを締め付けた。
達しそうになるのを堪え、何度も抽出を繰り返す。
限界が近付いてきたのが見えて、カゲミツのモノに手を伸ばした。
集中的に弱い部分を突き上げると、カゲミツが呻き声を上げて熱を吐き出した。
それにつられて、カナエもカゲミツの中に熱を注ぎ込んだ。



軽く後処理をして帰ってきた自宅で、カゲミツは大層ご立腹だった。

「カゲミツ君、お風呂の用意が出来たよ」
「腰が痛い、立てない」

連れていけと言わんばかりに睨まれてカナエが苦笑する。
お姫様だっこをしたいところだけど、これ以上機嫌を損ねると大変なので肩に腕を回した。

「しばらくヤんねぇからな!」

プンプンと怒りながら歩くカゲミツが可愛いなんて思ったのは秘密だ。
脱衣所に着いて部屋に戻ろうとすると、服の袖を掴まれた。

「腰が痛くて一人で脱げない」

だから脱がせろと言うカゲミツが、カナエにもう一度頂かれてしまったのは言うまでもない。

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