▽06/07 00:51

「今日は帰るぞ」

カゲミツはそう言って俺の手を掴んだ。

「まだ終わってないんだけど?」
「明日一緒に怒られてやる」

そう言い切ったカゲミツの瞳がぎらぎらとしている。
パソコンをシャットダウンする暇もなく、うちに連れて帰られてしまった。

家に入った瞬間激しいキスでもしてくれるのかと思いきや、カゲミツは手を引っ張ったままずんずんと進んでいく。
リビングに到着して、ようやく手を解放してくれた。
次にどんな行動に出るのか。
顔には出さず内心どきどきしていると、カゲミツは予想外なことを言い放った。

「何が食いたい?」
「・・・は?」
「だから今日の晩飯は何がいいかって聞いてんだ」

ぎらぎらとした瞳は確かに欲に濡れていた。
だからてっきり家に帰るなり、と想像していたのにカゲミツは腕を組んで何が食べたいのかと繰り返す。
拍子抜けして目に見えてガッカリしたというのにカゲミツの態度は変わらない。

「なんでもいいよ、もう」

そう告げてテーブルに着いた。
カゲミツは小さくそうかとだけ呟いて、キッチンに入った。

不規則な包丁の音の後、しばらくすると美味しそうな香りがしてきても気分は浮かない。
一般的に見ると上手とはいえない料理もカゲミツにしたらよく頑張って作った方だ。
しかし今欲しいのはそんなものではない。
お互い向かい合って座っているというのに、無言で箸を進める。
いつもより随分早く終わった食事のあともカゲミツはさっきのようなぎらつきが見られない。
一体なんだったんだと顔をしかめていると、食器を洗い終えたカゲミツが遠慮がちに口を開いた。

「先に風呂入ってもいいか?」
「いいよ、別に」

パソコンに目を落としたまま素っ気なく答える。
だからそう言ったときのカゲミツの顔が薄く赤らんでいたなんて、気付きもしなかった。

「すぐ入るか?」

悶々と考えているといつの間にかカゲミツは風呂から出て来ていた。
あまりにもいつも通りな光景に溜息を吐き出す。
このままカゲミツは自室に戻って眠り、また自分も同じように夜を過ごす。
そう考えてサッとシャワーを浴び部屋のドアを開き、驚いた。

「早、かったんだな・・・」

そこには自分の部屋で眠っているはずのカゲミツがベッドに横たわっていた。
幻でも見ているのではないかと頬を叩いてけど現実のようだ。

「何やってんだよ・・・」

呆れた声の中に、ほんの少し焦れたようなものが混じっている。
とりあえずベッドに入ろうとブランケットをめくって、言葉を失った。

「あんまりジロジロ見るな・・・」

そう言われても視線を外すことが出来ない。
あろうことか、カゲミツは一糸纏わぬ姿でベッドに横たわっていたのだから。
驚きを隠せず固まっていると、手を引かれベッドに引きずりこまれた。
恥ずかしそうな表情だけど目はさっきのようにぎらぎらとしている。

「オミ・・・」

熱っぽく名前を呼ばれ唇を奪われた。
乗り上げて、足を絡めようとするカゲミツは紛れもなく望んでいた姿だ。
輪郭を確かめるように身体のラインをなぞると、一瞬離した唇から吐息が漏れた。色っぽい。

「意外と大胆なんだね」
「毎日中途半端に焦らすからだろ」

それは誰かが拒絶するからだと目で訴えるとフッと顔を逸らされた。

「はずかしいんだ、ちょっとは分かれ」
「じゃあ本当に嫌な訳じゃないんだ?」
「・・・わざわざ言わせるつもりか?」

真っ赤になった耳に舌を這わす。
小さく出た喘ぎ声が可愛らしい。

「そんなカッコで待ってたんだから、言えるでしょ?」

低く、甘く。
耳元でそう囁いてやるとカゲミツに睨まれた。

「お前に誘われて、嬉しくない訳ないだろ・・・」

睨みつけているくせに、もじもじと俺の髪を弄りながら言うなんて。
しばらく我慢していたことも重なり、その瞬間理性が吹き飛んだ。

「アッ、オミッ・・・」
「カゲミツ、大好き。愛してるよ」
「お、れも・・・アァン」

激しく腰を打ち付けながら溢れ出る気持ちを伝える。
それに応えようとしてくれるカゲミツが心の底から愛おしい。
もう何度目かになる絶頂を迎え、カゲミツの中に熱を注ぎ込んだ。

いつもだったら身体のことを考えてセーブしながらするところだけど、今夜はそんなことを考える余裕もなかった。
求め、求められるままに身体を重ねてシーツはいつも以上に乱れてしまっている。

「カゲミツ、大丈夫・・・?」
「わかんねぇ」

そう言いながらも薄く笑ったカゲミツの額にキスを落とす。
こんなに心が満たされる夜は、初めてかもしれない。
甘い空気が二人を包む中、雰囲気に乗せて口を開いた。

「カゲミツの気持ちが知れてよかった」
「俺だって本当に嫌な訳じゃないんだ」
「わかってる、でも次はカゲミツからも誘って欲しいな」

雰囲気を壊さないよう、啄むようなキスを降らせながら。
しかしカゲミツはその言葉を聞いた瞬間に黙り込んでしまった。
やっぱり言うべきではなかったのか?
襲ってくる後悔に肩を落としていると、小さく名前を呼ばれた。

「オミ」
「ん?」
「もう一回、」

・・・したい。
最後は聞こえないほど小さな声だったけれど確かにそう聞こえた。
治まったはずの熱が急速に身体を駆け巡る。
そのままカゲミツが気絶するまで愛し合ったのであった。

翌朝目が覚めると始業時刻はとっくに過ぎていて、遅刻と終わらなかった仕事と二重に怒られてしまったけれどそれでもまぁいっかと思えてしまうのだった。

*

オミさんのプチ家出はマンガ喫茶ですよ←
入れようかと思ったけど長くなったのでやめました


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