▽04/08 01:30

「あんまりうるさく騒ぐな」

低く告げられた言葉に、嫌な思い出が脳裏に甦る。
思わず小さな悲鳴を上げたが、あいにくこの部屋には同じ思い出を共有する二人しかいない。
いつも一緒にいるはずのヒカルは腹が減ったとコンビニに行ってしまった。
心底嫌な顔をして声の方を見ると、心外だとキヨタカが息を吐き出した。

「何をそんなに嫌そうな顔をするんだ?」
「お前にそう言われると嫌なことを思い出すんだよ!」
「あの濃厚なキスのことか?」

しれっと口に出されてカゲミツが一瞬固まってから、顔を真っ赤にして叫んだ。

「なっ・・・、あんなもんキスじゃねぇ!!」
「お前のファーストキスじゃなかったのか?」
「あー!もう言うな!思い出させるな!」

ぎゃあぎゃあと叫ぶカゲミツにキヨタカが無言でグッと顔を近付ける。
唇まであと10cmというところでぴたりと止まった。
しんと、部屋が静まり返る。

「本当はして欲しいから騒いでるんじゃないのか?」
「そ、そんな訳ねぇだろ」

本当は勢いよく叫びたいが、近過ぎる距離にそうもいかない。
じりじりと後退して距離を取った。

「俺はいつでも構わないんだぞ?」
「俺は一生お断りだ!」
「あんなに熱っぽく俺を見ていたくせに」

お前の初恋は俺じゃないのか?
クツクツとからかうように笑いながら言ったキヨタカだったが、いつまで経ってもカゲミツが反応を示さない。
不思議に思い顔を覗き込むと、さっきとは違う意味で顔を赤くさせたカゲミツがいた。

「テメェ、人のことを何だと思ってんだ」
「・・・まさか図星だったのか?」
「っ!まさかそんな訳ねーだろ!!」

一瞬驚いたような顔をしたことが、図星だと言っているようで。
ニヤリと口角を上げたキヨタカにカゲミツが逃げようとしたが一歩遅かった。

「そうだったのかカゲミツ、早く言えばいいものを・・・」

いつもとは違う甘さを含んだ声で、カゲミツの両腕を捕らえた。
力では敵う訳もなく精一杯抵抗しても無駄なだけだ。

「カゲミツ・・・」

いつもヒカルはこんな声を聞かされて騙されているのか。
その気持ちが少しわかったような気がしてブンブンと追い払う。
キヨタカの整った顔はもうすぐそこまで来ている。
触れる、そう観念して瞳をギュッと閉じた時、ドアの開く音が聞こえた。

「何やってんだ?」

コンビニに行っていたヒカルがようやく帰ってきたのだ。
今まさにキスをしようという体制なのに、平然とした顔でテーブルに買ってきたものを広げている。

「お前が遅いからカゲミツをからかって遊んでいたんだ」

何をいけしゃあしゃあと。
睨んでみるとキヨタカが声を出さずに口だけを動かした。

「また今度な」

ブルリ、背中が震えたカゲミツに構わずにキヨタカはヒカルの方に行ってしまった。

ドキドキと早鐘を打つ心臓に熱い顔。
これは絶対に怒りのせいだと思い込んでカゲミツもヒカルの方に向かった。

*

チビカゲサイドストーリーを見たときに、なぜかカゲミツの初恋はキヨタカだと思い始めまして
確か嫌いなヤツにはキスしないって言われてカゲミツがえっ、てなってるところを見たからやったと思うんですけど
それからキヨタカに「お前の初恋は俺だろ?」と言わせたいと思い続けて約一年くらい?
ちょっと違う感じになりましたが、まぁついにやっちゃった訳です←
キヨカゲ楽しいなぁ←

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