▽03/23 00:19

「カナエ、ちょっと待てよ」

任務も無事に終わり、最後の報告の為にミーティングルームに向かおうとしたところをカゲミツが呼び止めた。
何も気に障るようなことはしていないはずなのに、顔はむすっと不機嫌そう。
困って小さく首を傾げてみたら腕を小突かれた。
そこは先程の任務で傷を負ったところで、一瞬顔を顰めてハッとした。

「バレてねーとでも思ってたのか」

腕を組んで相変わらず不機嫌そうなままカゲミツが口を開いた。
身長は変わらないのに、見下ろされているような気分だ。

「お前はそうやっていつも何も言わねぇ」

そう言って今度はぎゅっと強い力で掴まれた。
どうってことないと思っていたけど、さすがに痛い。

「俺はそんなに頼りねぇのかよ」
「そんなことはないよ!」

ピリッと走る痛みも忘れて叫ぶ。
信頼していない、そんな訳はない。
むしろ全幅の信頼を寄せている。
ただ余計な心配は掛けたくない、ただそれだけだ。
しかしカゲミツは納得していないみたいで。

「お前がやってることは、そう言ってんのと一緒だろ」

小さく吐き捨ててミーティングルームの方に歩いて行ってしまった。
追い掛けることも出来ずにその場に立ちすくんでいると、ガラリと音を立ててワゴン車のドアが開いた。
中からはヒカルが申し訳なさそうに顔を覗かせている。

「聞くつもりはなかったんだけど、出るに出れなくて・・・」
「いや、こちらこそごめんね」
「聞いちまったついでに言うけどさ、アイツなりに心配してんだ」

強く掴まれたせいで傷口が開いてしまい、小さく赤に染まったシャツを指してヒカルが苦笑する。

「アイツ不器用だからな」
「でも凄く怒ってたよ」
「気になるから怒るんじゃねーの?」

ヒカルの言葉がすとんと胸の中に落ちる。
愛しさが身体いっぱいに広がっていく。

「ありがとう」
「それはカゲミツに言ってやれよ」

ミーティングルームで救急箱持って待ち構えてんじゃねぇ?という言葉を背中に浴びて、足を早めた。
全く素直じゃない彼に感謝と愛しさを伝えるために。

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